中国動画配信大手「愛奇芸」、身売りの噂が再燃 販促コストやコンテンツ版権料が重い負担に

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動画配信ビジネスは、ユーザーをつなぎ止めるために最新コンテンツの版権確保が欠かせない(写真は愛奇芸のウェブサイトより)

中国の動画配信大手、愛奇芸(iQIYI、アイチーイー)の「身売り説」が再燃している。

ロイター通信は6月15日、匿名の関係者からの情報として、愛奇芸の親会社であるネット検索大手の百度(バイドゥ)が全保有株の売却を検討していると報道した。買い手候補として香港に本拠を置く投資ファンドのPAGと中国の国有通信大手の中国移動(チャイナ・モバイル)の社名を挙げ、愛奇芸の企業評価額は70億ドル(約9427億円)に上ると伝えた。

この報道を愛奇芸は即座に否定。同社は6月15日夜、財新記者の取材に対して「事実無根であり完全なデマだ」と断言した。一方、百度からの回答は「ノーコメント」だった。

ここ数年、株式市場では「愛奇芸が身売り先を探している」との噂が流れては、それを当事者たちが否定するパターンが繰り返されてきた。例えば2020年下半期には、買い手候補としてネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)、アプリ開発大手の字節跳動科技(バイトダンス)、電子商取引(EC)大手の阿里巴巴集団(アリババ)などの社名が相次いでささやかれたが、現実には結局ならなかった。

過去3年で累計4600億円超の損失

百度は現在も愛奇芸の発行済株式の5割超を保有する支配株主だ。愛奇芸が3月28日付でアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した報告書によれば、百度は愛奇芸のB種普通株(訳注:一般投資家向けのA種普通株より多数の議決権が付与された株式)のすべてを保有しており、議決権ベースでは91.8%を握っている。

だが、百度の経営はいま大きな転換期にさしかかっている。最大の収入源であるネット広告の伸びが頭打ちになるなか、新たな成長分野を求めてクラウドサービスや人工知能(AI)などの非広告事業により多くの経営資源を投入。総売上高に占める非広告分野の比率を、3年以内に5割以上に引き上げることを目指している。

そんななか、愛奇芸の身売りの噂が絶えないのは、百度の事業再構築の過程で切り捨てられる可能性があるからだ。動画配信ビジネスは、視聴者の限られた時間をショート動画アプリと奪い合っており、ユーザー数の維持や拡大に莫大な販促コストがかかる。加えて、外部コンテンツの版権料やオリジナル番組の制作費が経営の重い負担になっている。

本記事は「財新」の提供記事です

過去3年間の愛奇芸の純損失は累計234億元(約4674億円)に上る。動画配信の競合企業と比べても、同社が追加投資を獲得するのはテンセント傘下の騰訊視頻(テンセントビデオ)やアリババ傘下の優酷(ヨウクー)よりも(親会社の資金力が相対的に見劣りするため)難しそうだ。

(財新記者:関聡)
※原文の配信は6月15日

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