ショート動画アプリTikTok(ティックトック)の中国国内版である「抖音(ドゥイン)」は、1日当たりのアクティブ・ユーザー数が6億人を超える中国屈指の人気アプリだ。そのプラットフォームを活用したEC(電子商取引)事業の「抖音電商(ドゥインディエンシャン)」が、ここに来て急成長を見せている。
抖音の運営会社の字節跳動科技(バイトダンス)は5月31日、抖音電商の関係者向けの年次イベントを開催し、抖音電商を通じた商品販売の総額であるGMV(流通取引総額)が2021年は前年の3.2倍に拡大したと明らかにした。
中国のEC業界のライバルと比較すると、抖音電商の成長速度は際立っている。例えば、EC最大手の阿里巴巴(アリババ)が運営するライブコマース(生中継のネット動画による実演販売)のプラットフォーム、淘宝直播(タオバオライブ)の2021年のGMVは5000億元(9兆5549億円)を突破したものの、前年比の成長は2倍にとどかなかった。
バイトダンスはGMVの具体的な額を公表していないが、財新記者の取材に応じた関係者によれば、抖音電商の2021年のGMVは8000億元(15兆2878億円)を超えた。2022年はこれを1兆元(約19兆1098億円)から1兆2000億元(約22兆9317億円)に引き上げるのが目標だという。
なお、財新記者の問い合わせに対してバイトダンスは、上記の数字は正確ではないと回答した。
高額な販促コストに恨み節も
抖音電商の急成長を支えているのは、ショート動画のプラットフォームが生み出す巨大なトラフィック(通信量)だ。バイトダンスの開示情報によれば、抖音電商では毎月2億本を超えるショート動画と900万本を超えるライブコマース映像が配信されている。それらを経由して2021年に販売された商品数は100億点を超えた。
2021年末時点で、抖音電商に出店する企業や個人事業主は180万組に達した。抖音電商の副総経理(副事業部長に相当)を務める木青氏が冒頭のイベントで公表したデータによれば、2021年の販売額が1億元(約19億1098万円)を超えた出店者は1211組、年間GMVが1000万元(約1億9110万円)を上回ったライブコマースのインフルエンサーは1万2070組、アイテム当たりの年間販売額が1億元を超えた商品は175点に上った。
ただ、抖音電商は関連するショート動画をシェアする際にトラフィックの上限を定めている。出店者がさらなる販売促進を望む場合は、バイトダンスから追加のトラフィックを購入しなければならない。
要するに、抖音のプラットフォーム上で自社商品を目立たせるには、トラフィックを増やすための高額なマーケティングコストを負担する必要がある。このため出店者からは、「利益を出すのが難しい」との恨み節も聞こえてくる。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は5月31日
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