イーロン・マスクが成功率を低く見積もる理由 「悲観的すぎる人」がなぜか最後に笑う秘密

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「『電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ』という人々の誤った認識を、変えられると思ったのです」と、前述のテレビ番組でペリーに語っている。

「わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしても、どこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすれば、なおさら挑戦する価値はある」(マスク)

必要なのは「自信」よりも「覚悟」

「自信があれば成功できる」という発想でモチベーションを高めようとする人たちは、失敗の可能性を認めれば、やる気が削がれ、リスクを取ろうとしなくなると見なす。そして「絶対に失敗しない」と固く信じることが、最大限の努力をして成功を目指す秘訣だと考える。だが現実には、それとは逆であることが多い。

つまり、事前に失敗の可能性を受け入れるからこそ、さまざまな縛りから解放されて、目標に向かって邁進できるようになるのだ。「失敗する可能性だってある」とわかっているからこそ、臆病ではなく大胆になれる。必要なリスクを取る勇気が得られる。

マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。

「それが運命だと思えば、気が楽になります。失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」(マスク)

成功率を正確に把握したからといって、必ずしもその挑戦の価値が落ちるわけではない。それでも、乗り越えなければならない心理的な問題はある。

つまり、成功率が低いとわかっているときに、それでも挑戦を続けられるかという問題だ。

たとえ全力を尽くしてもうまくいかない可能性が高いときは、どうやって自分のモチベーションを上げればいいのだろう?

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