こうして因子分析で価値観を数値化したことで、属性だけで見ていたときよりも消費者を細かく把握することができるようになる。
例えば、因子分析の結果と回答者の購買データを掛け合わせたとすると、価値観による購買傾向の違いを検証できる。
健康志向スコアの上位20%とそれ以外で、特保系飲料の平均購入本数を比較したとしよう。表3の例の場合、健康志向スコア上位20%の人はそれ以外の人の3倍以上特保系飲料を購入していると読み取れる。さらに表4の例からは、そうした健康志向スコア上位の人は40~60代女性の比率が高いと読み取れる。
実際にマーケティングの現場で因子分析を使うケースでも、価値観の因子だけではどんな人がその志向が強いか見えてこないため、属性と掛け合わせて消費者を把握することが多い。また、今回の例では健康志向のみ取り上げたが、複数の因子を使えば、特保系飲料のシェアが大きいのはどういった価値観の消費者なのか、といった分析も可能である。
●表3:健康志向スコア×特保系飲料の平均購入本数(月当たり)
価値観因子 | 特保系飲料購入本数 |
健康志向スコア上位20% | 12.7 |
それ以外 | 4.1 |
●表4:健康志向スコア×性別・年代
アンケート項目に関係ない価値観は発見できない
今回は、潜在的な価値観や考え方を数値化する因子分析を紹介した。因子分析によって、どのような価値観があるかを発見し、またそれを数値化することで、人ごとにどの価値観が強いかを知ることができる。
ちなみに、今回紹介した、複数の項目の中から因子を探しだす因子分析を、探索的因子分析という。探索的因子分析の場合、聴取時点では意図していなかった因子が結果的に見つかる、というパターンもある。
ただし、アンケート項目にまったく関係ないような価値観は発見できないので、事前にある程度の想定をして項目を作成するのが重要である。対して、今回は紹介しなかったが、因子の構成や名前を事前に全て決めて行う因子分析を確認的因子分析と呼ぶ。確認的因子分析は、事前に立てた仮説にデータが当てはまるか検証するために行う。
因子分析によって発見、数値化した因子は、回答者の属性や購買履歴など他のデータと繋げることで、消費者の理解を深めるのに大いに役立つ。今回は複数の因子を事例として挙げたが、これらの因子同士は無関係ではない。健康志向が強い人は、コンビニやファストフード店の利用が少ないため簡便志向は弱いと考えられるし、新しく「ブランド志向」という価値観が数値化されれば、節約志向とは相反する傾向になると推測される。
このような複数の指標の関係性を基に、似た者同士をまとめていくつかのグループに分ける分析手法をクラスタリングという。次回は、このクラスタリングについて解説していきたいと思う。
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