理解無視、暗記だけの数学は歯止めが必要な理由 数学の教えと学びに必要不可欠な視点は何か

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そして、「意味(プロセス)を理解することが面白い」「意味(プロセス)を理解することによって応用力も身に付く」という部分は浸透しつつあるようだ。

著書では普通に書いたつもりの発想に対して、「ようやく分かりました」という“大人”からのコメントも意外にあった。いくつか事例を紹介すると、「1/5 + 2/3」を例にして、縦に5個、横に3個の合計15個並ぶ正方形で通分の考え方を視覚的に理解すること。

右辺にあるxを左辺にもっていくような移項に関して、「両辺に同じ‐xを加えることによって導く」という説明から理解できること。837×654の筆算は、837×4と837×50と837×600の和であることを強調した部分によって理解できること、等々。

読者から最も評価された部分は、「わかりやすい」には「暗記しやすい」と「理解しやすい」の二通りの意味があるという箇所で、ご指摘をいただいたことによって、この部分は核心を捉えていることに気付かされた次第である。

「40‐16÷4÷2」が国民的な話題に

四則混合計算の意味や背景を説明するために著書で取り上げた計算問題「40‐16÷4÷2」が国民的な話題になったことは、今もって不思議である。きっかけは、この式に対する関心が高かったことから、昨夏にネット記事「現代ビジネス」の「数学間違い探し」のコーナーでも取り上げたところ、驚異的な閲覧数に跳ね上がった次第である。

著書では、グーとパーだけの(ゲーム理論的な)ゲームや、同じ大きさの円の周りをすべらないように円を一周させると何回転するかという問題など、子ども達と一緒に手を動かして遊ぶ問題も紹介した。「実際に体を動かして学ぶ数学教材はもっと開発すべきではないか」という内容のコメントをいただいた。

数学の問題を解くきっかけとなる「ひらめき」とその前段階にある「あたため」に関する部分では、脳科学的な質問をいただいたものの、専門外の筆者ではとても答えられる内容ではなかった。しかし、脳の仕組みに関する大きなテーマではないかと改めて思った次第である。

一方で、高校入試の在り方に関する東京都の中学校の教員からの質問には、重苦しい気持ちにならざるを得なかった。それは一つの節として「空所補充式の証明問題はナンセンス」を書いた部分について、「地方の公立高校の数学入試問題は記述式ですが、東京や神奈川県の公立高校の数学入試問題はマークシートです。

中学生対象の授業でも、全文を書かすことを省略して、最初から都立高校の入試対策として、マークシートの解答欄の正解を当てるような指導をされる教員もいます。この状態を放置すると、地方と首都圏の違いが現れてくるように思いますが、どのようにお考えでしょうか」というものである。

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