「論理思考より直感が大事」信じる人の残念な盲点 「地頭力を鍛える」著者が語る論理思考の本質

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ところで、自分の仕事が「攻めだけ」という人はほとんどいませんよね。だから論理思考は、身についていないとまったく話にならない、ビジネスコミュニケーションの基本中の基本の素養です。論理思考は、一般的な社会人として仕事をするための「インフラ」的な役割を果たします。論理思考ができないというのは、言葉がわからないというのとほぼ同義なのです。

多くの人がそのことに気がついており、自分も論理思考を身につけたいと考える人がたくさんいるからこそ、このテーマの本を多くの人が手にとられているのでしょう。

「自分が論理的かどうか」を自分で見分けるのは難しい

では、みなさんは自分が論理的に考えられるタイプだと思いますか? それとも、自信がないでしょうか。

論理思考が身についているか否かを見分けるポイントとなるのは、「客観性」です。

本人がいくら「自分は論理的な説明ができる」と思っていたり、主張したとしても、その人の説明を聞いた人が納得できないようであれば、その人は論理的だとは言えません。

しかし、実際には、人から見るとまったく論理的ではないのに、自分自身を論理的であると信じ込んでいる人は少なくありません。なぜなら、自分自身のことを客観的に捉え、正確な判断を下すのは、一般的に考えられている以上に難しいからです。

そして、自分が論理的であると信じているために、論理思考が身につかない人がけっこう多い。論理思考の本を読んで勉強しようと思っている人は、「自分が論理的ではない」と自分を客観視できているわけで、実はそれだけで「論理的な素養がある人」と言えるのです。

自分が論理的かどうかをチェックするのに有効なのは、人の言葉に耳を傾けることです。なぜなら、論理思考が身についているか否かを決めるのは、自分ではなく「他人」だからです。

たとえば、プレゼンがうまくいかなかったとき、「自分は論理的に説明しているのに、相手の理解力が低すぎる」と、相手に責任を転嫁する人がいますが、こんなことを言っている人はまったく論理的ではありません。

頭の中でどんなに立派なことを考えていても、それを聞いた人の納得を得られなければ、論理思考が身についているとは言えないからです。論理思考とは、「伝える力」が伴って完結するものなのです。

これらのことをご理解いただいたうえで、論理思考を身につけたいとお考えの方には、今回上梓された『伝説の「論理思考」講座』は格好のガイドブックになると思います。

この本は1人で読んでも、客観的な評価ができるように書いてあります。しかし私は、この記事の冒頭でも少し触れたとおり、この本で紹介されている問題を複数の人間で実際に解きながら、「モレ」や「見落とし」がないかを互いに指摘しあう読み方をお勧めしたいと思います。

人は自分自身のことを客観的に捉えるのが苦手です。だから、複数の人間で指摘しあうほうが、効果的に論理思考が身につくのです。

私のビジネスフィールドであるコンサルティングの世界では、論理思考が身についていないと話にならないどころか、生きてすらいけません。そのせいもあって、職場では同僚同士で互いの意見に対して丁々発止の「突っ込み合い」が展開されるのが日常です。

その分、たしかに論理思考は鍛えられるのですが、時には行きすぎて、重箱の隅をつつきあうような議論になったりします。でも、まだ論理思考に慣れていない人の場合はそうはならないので、あまり気にせず、活発に突っ込み合っていただくのがいいのではないかと思います。

(構成:小関敦之)

細谷 功 ビジネスコンサルタント、著述家

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ほそや いさお / Isao Hosoya

1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。

著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』、『アナロジー思考 「構造」と「関係性」を見抜く』『問題解決のジレンマ イグノランスマネジメント:無知の力』(以上、東洋経済新報社)などがある。

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