「論理思考より直感が大事」信じる人の残念な盲点 「地頭力を鍛える」著者が語る論理思考の本質
この意見にも、一部は共感できるところがあるのですが、論理思考に関しての誤解も交じっているような印象も受けています。そこで、本稿では改めて「論理思考とは何か」という本質について説明をしておきたいと思います。
「守り」と「攻め」は何が違うか
そもそも、「守り」か「攻め」かという観点では、論理思考は「守り」の局面で威力を発揮するものです。一方、感性や直感は「攻め」の場面で威力を発揮するものです。
当然、「守り」と「攻め」では状況が異なるので、単純に「感情や直感が論理思考より有効だ」と決めつけてしまうのは、乱暴かつ短絡的なのです。
これらの違いを簡単に解説しましょう。何か好きなスポーツや、歴史が好きな人は戦の場面などを想定してもらうのがよいでしょう。どれについても「守り」と「攻め」の関係は似ています。
守りはローリスク・ローリターン、つまり大きなリターンを得るというよりはリスクを最小にすることが求められ、攻めでは多少のリスクを冒してでも「大勝利」があり得ます。そのために失敗の許容度が攻守では異なり、守りでは減点主義でとにかく失点を最小にすることが求められます。
このために必要なことは、全方位を固めて、弱いところを底上げするという発想です。
このような背景から「守り」のための思考である論理思考は、そもそも「モレ」や「見落とし」を回避し、「あっ、しまった」という事態を生じさせないことに主眼が置かれています。そのため、論理思考だけで何かとんでもなく新しいアイデアを生み出せるかといえば、それは難しい。そもそも、そのための思考法ではないので当然です。
そういう意味では、イノベーションを生み出すとか、新規事業に打って出るなどの「攻め」の局面に入ったら、論理思考だけでは事足りないというのは正しいといえます。
しかし、「攻め」のフェーズに入ったからといって、論理思考による「守り」が必要ではなくなるかというと、そういうわけにはいきません。
なぜなら、「ここをこう攻めよう」という決断自体は「感性や直感」でできますが、その攻め手をブラッシュアップするうえでは、論理思考が必要になるからです。また、立場が逆転して攻撃を受けたときには、「直感」や「感性」だけでは弱点だらけになってしまい、守り切れません。
つまり、平時には論理思考を用いて「守り」を固めつつ、いざ「攻め」のタイミングが来たら、「直感」や「感性」も用いるという使い分けが重要なのです。「感情や直感と論理思考、どちらが優れているか」と論じること自体がナンセンスなのです。
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