「感染性胃腸炎」から早く回復する方法とは? 「体力をつけよう」で、無理な食事は逆効果

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お腹が痛いときには、整腸薬や木クレオソートを服用し、水分を補いつつ下痢や嘔吐でウイルスを早く体外に出してしまうと治りが早いそうだ。

働き盛りの世代は3日間程度休養すれば治るのだが、中には出勤したところ、上司から「治癒証明書を提出しなさい」といわれた人もいる。ノロウイルスは、感染力が強いため職場での流行阻止を考えてのことだろう。

しかし、ノロウイルスの有無を調べる「迅速検査キット」の検査は、多くの場合、保険適用外(3歳未満、65歳以上、抗がん剤治療中などは適用)で自費診療。施設によって費用は数千円~数万円とマチマチ。せっかく早く治っても、治ったことを証明するために検査を受けなければならないとは、ノロウイルスはやっかい極まりない。

「飲食店や医療従事者など、特定の人には検査が必要ですが、一般の会社員の方には治癒証明書は無意味です。なぜならば、ノロウイルスは、症状が治まっても1カ月程度は便に排出され続けるからです。また、そもそも感染しても無症状でウイルスだけ排出する人もいます。職場での感染拡大を防ぐならば、治癒証明書よりも、こまめな手洗いやマスクといった、エチケットを徹底させる方が効果的といえます」(同)。

手洗いやマスクは、ノロウイルスだけでなく、インフルエンザや風邪の流行抑止にもつながると考えられている。日頃から職場でのエチケットの確立が、証明書よりも健康管理に役立つというわけだ。

甘いものを食べると免疫力が低下しやすい

職場や家庭内などで自らがノロウイルスの流行の火種にならないために、長尾院長は、次のような日頃の健康管理を勧める。

①睡眠時間を7時間前後確保する

② 1日3食、バランスのよい食事を適量に食べる。手作り弁当を持参するなど、外食は控える

③外出後や食事前などに手洗いや、水やお茶でのうがいをこまめに行う

④ 自律神経機能を高めて免疫力を上げるため、なるべく歩くように心掛ける

⑤甘いものを食べ過ぎない。

「忙しいビジネスマンは、食生活が不規則になりがちです。結果として、免疫力が低下し、感染性胃腸炎だけでなくインフルエンザにもかかりやすくなります。最も良くないのは、甘い物の食べ過ぎです」(同)。

疲れたときに甘いモノを食べると、ブドウ糖を主な栄養源にしている脳が元気になるといわれているが、糖分が体内に増えすぎると、免疫機能や認知機能が低下しやすくなるそうだ。ストレス発散のためのスイーツは、ほどほどにした方が無難といえる。

「2月14日のバレンタインデーの後に、チョコレートを食べ過ぎて、咳喘息(ぜんそく)という咳が止まらないアレルギー症状を引き起こす方がいます。甘いモノを食べ過ぎると、免疫機能がバランスを崩して低下しやすくなるのです。結果として、アレルギー症状が生じ、感染症にもかかりやすくなります。セルフメディケーション知識を持ち、それを活用することで、ノロウイルスだけでなくインフルエンザも予防していただければと思います」と長尾院長は話す。

安達 純子 医療ジャーナリスト

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あだち じゅんこ / Junko Adachi

東京生まれ。医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。大手企業のOLから転身。フリーランスの雑誌記者としてさまざまなジャンルの取材を行う中で、病気の発生メカニズムに興味を持ち、医療関係の記事の執筆に比重を置くようになった。現在は、先進医療といった最新の医療状況をはじめ、免疫疾患や感染症などに強い関心を持つ一方で、生活習慣病といった身近な病気を対象とした記事を数多く新聞等で連載中。身体に個人差がある中で、その人にとっての健康とはなにか。病気の仕組みはどこまで解明できるのか。また、未知の病気の正体はどこにあるのかなどをテーマに現在取材を進めている。

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