男性育休「丸2年取った人」が得た新しい人生観 キャリアや収入源の不安とどう向き合ったのか

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育休中は育児休業給付金が支給されるが、給与の100%が保障されるわけではない。はじめの半年間は給与の67%(所得税、社会保険料、雇用保険料が免除となるため、手取り金額は休業前の8割程度)、以降は50%給付され、子どもが1歳になると支給されなくなる。

ただ、加藤さんは育休中の収入減は「育休をとらない理由にはならなかった」と語る。

「うちは夫婦ともに育休を取っていたので、日々の生活に時間的なゆとりがありました。その時間を使って、実は副業をしていたんです。働きすぎると育児休業給付金が減額になるので注意が必要ですが、給付金で足りない分を副業で補えました」

「だから僕にとって育休によるデメリットって、一つもなかったんですよ。家族との時間を大切にできて、子どもの成長を見られて、MBAをとったりキャリアを見つめなおす機会も作れた。たった1~2週間の育休では味わえない体験ができたと思っています」

「キャリアへの影響」は仕方ない

エネルギー関連業界でエンジニアとして働く鈴木航平さん(仮名・40代)も4年前、第一子が生まれる際に、1年間の育休を会社に申請した。夫婦ともに親のサポートを受けられない環境で、妻がワンオペで育児をするのは大変だろうと思ったことがその理由だ。しかし、なによりも「自分自身が育児をしてみたかった」と鈴木さんは笑う。

「初めての子育てだったので、できればそばで子どもの成長を見たいと思いました。それに、ヘンな言い方ですが、仕事のように育児というプロジェクトをマネジメントしてみたらどうなるのかなという好奇心もあって。実際にはうまくいかないことの連続で、命を預かっているという仕事とはまた違う重みもあり、仕事の何百倍も大変でしたけれど……」

鈴木さんにとって唯一の懸念点は収入が減ること。しかし、夫婦ともにフルタイムで働いていたことから育児休業給付金は双方に出る。あわせれば1人分ほどの収入になり、許容範囲だと思えた。

「出世への影響も考えなかったわけではありません。ただ幸運なことに、会社は育休取得を奨励するスタンスでした。男性で1年の育休をとった社員がいなかったため、人事も『ぜひ取ってほしい』と」

「ただ、もしも出世に影響が出ることがわかっていたとしても、結局は、育休をとっていたと思います。育休をとらずに仕事を頑張った人と、育休をとって仕事を休んだ人を単純比較したとき、どちらが会社から評価されるべきかというと、個人的には前者だと思うんです。仕事と家庭、どちらを優先するかは、1人ひとりが選択すればいい。僕は、自分自身で『この1年間は家庭を優先する』と決めた。それでキャリアに影響があったとしても仕方がないし、それでいいと納得していました」

一方、妻側は夫の育休をどのように捉えていたのだろうか。鈴木さんの妻、里子さん(仮名)はこう語る。

「最初に1年間の育休をとると聞いたときは、正直、“長すぎじゃない?”とは思いました。ただ、人生の中で1年間、仕事を休む機会なんて、これを逃したらもうないだろうし。まぁ、やってみてもいいかなって」

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