「熊本の地元紙」サッカー部暴力報道で見せた執念 秀岳館問題でスクープ連発、熊日新聞の舞台裏
「コメントを読むと、こんな理不尽なことがあるのか?と多くの方が怒っていました。現在のような閉塞した社会で、似たような理不尽な思いを抱く人は多い。暴行されたから被害届を出したのに、さらに理不尽な目に遭った生徒への自己投影もあったのではないか。コーチから部員への暴力よりも、先輩にやられて部活をやめた人のほうが多いのかもしれない」
10日には、県政記者にこの記事の受け止めについて聞かれた蒲島知事が「今の状況は看過できない。早く学校に行きたがっている生徒のため、あらゆる可能性を追求したい」と、生徒の高校進学を支援する考えを示唆。同日夕方にはデジタル配信された。
蒲島知事は、筑波大学講師からスタートし、東京大学教授を退職するまで20数年間を大学教員として歩んだ経歴を持つ。教育者として許せない部分があったのかもしれない。その後、段原前監督が退職した際も「究明に協力を」と促し、このままでは終わらせない姿勢を示している。
「デジタル・紙で報じて読者の行動を促せていけたら」
秀岳館の事件以前、熊日のデジタル配信記事への最多コメントは2000件だったという。両替が有料になったため自宅で貯めた硬貨をスーパーで大量に使用するため自動レジが故障したという記事だ。コメントが100以上つくと、社内で話題になるほどだったという。
「今回の報道のように、デジタルで世論を形成しつつ、紙でも報じて読む方の行動を促していけたら。地方に住む読者が、また中央で言ってるだけでしょ、とならずに済むのではないか。今後も部活の暴力のような全国的な問題をきちんと共有していきたい」
そう話す植木記者、中学時代は陸上競技800メートルの熊本市強化選手だった。顧問が「全国大会を目指せ」と自分の意志に関係なく勝手に強化チームに登録したことに反抗し、強化選手を降りた経験をもつ。
「陸上を楽しみたかったのに、顧問にわかってもらえなかった。秀岳館の生徒も、全国大会という目標があったとしても、単に勝つだけでなくサッカーを楽しみたいと思っているはず。今後も秀岳館問題の究明に力を尽くしたい」と顔を引き締めた。
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