「熊本の地元紙」サッカー部暴力報道で見せた執念 秀岳館問題でスクープ連発、熊日新聞の舞台裏

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熊本日日新聞の植木泰士記者(写真:筆者撮影)

「ネットの話題を私たち一般紙が取り上げるのはまれなことです。ネットの情報は裏取りが難しく、どうしても静観することになりがちです。しかし、動画の内容が非常にショッキングだったため、記事化をする判断につながったと思います」(植木記者)

記事が紙面に載った22日、今度はサッカー部の公式ツイッターに部員11人が「お騒がせして申し訳ありません」と頭を下げて謝罪する動画が投稿された。その日夜23時までの再生回数は33万回超。

これについても同日夜にデジタル版で「サッカー部員が“謝罪”投稿 コーチの暴行動画で」と報じられた記事は、翌23日付朝刊では2社面の隣にある「第1社会面(1社面)」に格上げされた。識者2人に取材し「本人たちの意思だったとしても、ネット上に一度投稿すれば完全には消せない」「まず大人が対応すべき」と警鐘を鳴らした。

ネット上には熊日などの報道が整理された記事が相次ぎ、Twitterでは「#秀岳館」がトレンド入り。ネット界で話題になるなか、熊日は運動部記者が熊本県高等学校体育連盟(高体連)に取材し、選手の活動は保証するとのコメントを記事で紹介。動画が再生回数100万回を超えたのち23日午後に削除されたことも報じた。24日付朝刊では、引き続き1社面に載せた。

監督のテレビ出演がある意味ターニングポイントに

翌25日。段原監督(当時)が民放局のワイドショーに出演し、司会者であるタレントの「ほかには暴力はないんですね?」といった再三の質問に「ありません」と断言。部内での暴力の常態化をきっぱり否定した。ところが、監督がスタジオにいたまさにそのとき、SNSではその言葉とは真逆の内容が投稿され、再び騒然となっていた。監督が「おまえたちは加害者で、俺が被害者」などと部員らを罵倒する音声が拡散されたのだ。

「あのテレビ出演が、ニュースを一気にメジャーにしたし、ある意味ターニングポイントになりました。それまでは、熊本県内とネットの世界で盛り上がっている感じだったのが、何も知らなかった人たちにも届けられたと感じました。暴行動画のコーチがダメだったというだけでは済まされない。学校側はその頃一向に会見を開こうとせず、それも印象的でした」と植木記者は振り返る。

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