「熊本の地元紙」サッカー部暴力報道で見せた執念 秀岳館問題でスクープ連発、熊日新聞の舞台裏

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4月20日に暴力が起きて動画で拡散されて以来、熊日をはじめメディア側は学校側へ再三会見を開くことを要請したにかかわらず、実現まで2週間もかかっている。植木記者は「15日の問題発覚の段階で学校が会見を開きコーチを処分すると発表していたら、そのまま終わっていたかもしれない」と話す。動きが遅かったために、逆に病巣を顕在化させる時間を生んだとも言える。

浪人状態にされていた生徒は…

その後、植木記者は入学直前先輩部員に暴行を受け退部し、さらに学校へ入学したとも認められず、浪人状態にされた生徒について、熊本県私学振興課に尋ねた。そこでわかったのは、これだけ熊日報道で問題になったにもかかわらず、引き続きこの生徒がどこの高校にも転入できないままにされているという、驚くべき事態だった。

植木記者は「さすがに(秀岳館に)入学していたと学校側が対応を変え、どこかの学校に転入する形で救済されただろう思っていたら、まったく違っていました」と憤る。県私学振興課はほぼ動いていない気配を抱かせたうえ、関係者を取材すると実際にも事態に何ら変化のないことがわかった。

「秀岳館入学辞退、進学できず1カ月超」

生徒が1カ月以上たっても別の高校に進学できていないことを5月9日夜のデジタル版で、翌10日の朝刊は2社面で報じた。

私学を所管する県私学振興課は植木記者の取材に対し「私立高なので学校と保護者が話し合ってほしい。相談があればアドバイスする」とやや突き放したように見えるコメントをしていた。

そもそも同課は、暴力が常態化していた秀岳館を管理監督する側であり、今回の不祥事について猛省しなくてはいけない立場にある。にもかかわらず、策が講じられていないことは、ネット上の読者の感情を逆なでした。記事についたコメントは4000件に上った。

同じ3月に秀岳館サッカー部を辞め秀岳館への入学も取りやめた他の同級生の部員数名は、ほかの高校に転入できた。しかし、被害届を出したこの生徒だけが入学式を欠席したなどの理由で入学を認められなかったため、他校に転入できなかった。

段原前監督は上級生の暴力があったと訴える保護者に対し、「ただのじゃれあいだ。そんな話、気分が悪い」と突き放していたと、熊日は報じている。

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