数学を「日常で不要」と嫌う人が知らない真の魅力 算数と数学を同一視していると見えてこない

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まず、次のような四面体を用意します。正四面体でなくてもかまいません。この四面体の頂点、辺、面の数を数えてみましょう。頂点は4、辺は6、面は4ですから、v-e+fは確かに2になります。

出所:『教養としての「数学Ⅰ・A」』

新しい頂点を1つ増やしてみると……

次に、ここから頂点を増やしてより複雑な多面体をつくってみます。以下のように、新しい頂点を1つ増やすと、いびつな形の多面体ができました。この多面体の頂点、辺、面の数をそれぞれv′、e′、f′とします。

出所:『教養としての「数学Ⅰ・A」』

新たな図形における頂点の数は、最初の四面体よりも1個分増えていますから、+1。辺の数はどうなるかといえば、頂点が増えたことによって3本増えましたから、+3。面については、裏側と手前と下側で3つ増えましたが、消えた面が1つありますから+2。

『教養としての「数学I・A」』(NHK出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

こうしてv′-e′+f′をつくってみると、やはり2になっています。また次の新しい頂点を増やせば、同じように頂点、面、辺の数が変化して、結局その合計は2になることがわかります。

つまり、少なくとも四面体から頂点を増やすことでつくられる立体については、オイラーの多面体定理が成立するということです。

この定理を発見したオイラーは18世紀の大数学者ですが、立体図形についてこんなにもシンプルな法則をそれまでの偉大な数学者たちの誰もが見逃していたということに、オイラー自身とても驚いたと伝えられています。

しかもこのオイラーの多面体定理は、今日でいうところのトポロジー(位相幾何学)に発展しました。「ゴム膜の幾何学」とも呼ばれるトポロジー理論は、現代のAIにも欠かせない非常に重要な理論となっています。

永野 裕之 永野数学塾塾長

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ながの ひろゆき / Hiroyuki Nagano

1974年東京生まれ。暁星高等学校を経て東京大学理学部地球惑星物理学科卒。同大学院宇宙科学研究所(現JAXA)中退。高校時代には数学オリンピックに出場。レストラン経営、ウィーン国立音大への留学を経て、現在は個別指導塾・永野数学塾(大人の数学塾)の塾長を務める。著書に『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』(PHPエディターズ・グループ)、『大人のための数学勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。

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