日本とフランス「セクシー広告」の扱いは全然違う 公共空間で露出過剰な女性をさらすのはありか

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エマニュエル : バルコニーも公共空間の一部であるため、同様の法が適用されることになるので、フランスではそういったポルノ的要素のあるタオルなどを人目に付くように干すことはできないことになるね。

僕が初めて日本に行ったときに、コンビニでスーツ姿のサラリーマンがポルノ的要素のある雑誌を普通に読んでいて、驚いたのをよく覚えている。この時に、フランスと日本での、このことに関する感覚の違いが実感できた。

フランスも少しずつ変わっていった

エマニュエル : とはいえ、これでその国や社会を判断するというのも難しくて、フランス社会の歴史をみても、突然変化が起きることがあるし、これからも起こりうる。

冒頭話した法も1994年以前では、「良俗に反する印刷物、書物、版画、絵画、映画、写真等の公共の場での提示、展示、映写が行われた場合、1~2年の禁固、360~30000フランの罰金とする」というものだった。

つまり、以前は「ポルノ的性質」という言葉ではなく「良俗に反する」というもっと広範囲であいまいな表現を使っていた。良俗に反する行為には、「卑猥な行為」や「公然わいせつ」が含まれ、その「卑猥」を定義することはそれほど簡単ではない。

例えば、すごく丈の短いスカートは「卑猥」であると考えられる可能性もあるということだ。このようなあいまいな定義を1994年まで使用していて、突如としてそれが削除されたことで、社会に大きな変化を与えることになった。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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