思春期の心を揺るがす「脱マスク」の意外な盲点 他人の目を意識してマスクを外せない子もいる

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思春期の子の気持ちを考えると、コロナ感染が収束すればマスクを外せばいいという単純な話ではない(写真:msv/PIXTA)
新型コロナウイルス対策をめぐって、政府は5月20日にマスク着用が不要なケース等の見解を発表した。マスクの着脱については、感染や熱中症リスクの抑制、社会経済活動の正常化という視点を中心に議論されている。その際に置き去りにされがちなのが、乳幼児や思春期の子の脳の発達や心に与える影響だ。ヒトの心の発達や進化について研究している京都大学の明和政子教授に、問題点を聞いた。

――日常的にマスクをつける生活が2年以上続きました。この間、子どもたちにどのような影響があったと考えられますか。

ヒトは生まれると、養育者の表情を読み取り、声をかけてもらい、触れてもらうことで脳や心が成長します。そうした経験の積み重ねによって形成されるアタッチメント(愛着)は、子どもが養育者から直接保護される必要がなくなった後も、生涯を通じて重要な意味を持ちます。

幼少期に養育者と安定したアタッチメントを築くことで「いざとなればいつでもくっつける」という強い安心感が記憶に刻まれ、自立した後にも新たな環境に順応したり、未知の世界への冒険ができるようになるのです。

最新の研究では、アタッチメントは1人の養育者(母親)だけではなく、複数の人とも築かれ、多様な経験を統合していくことで、より安定した心理や社会的な適応を可能にするという考え方もあります。

思春期以降に問題が生じることも

いずれにせよ、幼少期にアタッチメント形成がうまくいかないと(希薄、剥奪、虐待など)、心身の発達に遅れや問題が生じたり、病気に対する抵抗力や免疫のはたらきが低下することがわかっています。また思春期以降にうつ病や多動性障害、解離性障害などが現れやすくなることも知られています。

そうしたヒトの心の特性は、数百万年という長い時間をかけて、身体を環境に適応させながら獲得されてきたものです。

にもかかわらず、突如として、社会全体で、マスクをつけて表情の下半分が隠れているという未曽有の状況となり、それが2年以上にわたって続きました。

その影響について、日本では残念ながら予算がおりず、きちんと検証されていません。しかし、イギリスのOfsted(the Office for Standards in Education)の調べによると、マスクの着用により幼児の言語能力やコミュニケーションスキルの発達に問題が生じていると報告されています。

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