若者のカラオケに見る、恐るべき「気遣い」事情 最新の曲も、1曲歌いきるのもタブー!

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前述したように、今の若者は、限られた時間の中で最大限に楽しみたいという欲求を強く持っている。もちろん学生なので、本当に「時間がない」わけではない。しかし、ゼミやバイト、サークルといった定番の活動以外に、インターンシップや学生団体での活動といった複数のコミュニティに属する若者も増えている。すべての活動に顔を出しながら、しかも、いずれの団体でも嫌われないように密にコミュニケーションを取り合うために、趣味などに割く時間が足りなくなる若者は明らかに増えている。

こうした背景が、極度に気を遣う若者のカラオケにつながっていると考えている。

原田の講評:「同調志向」をサービス開発のヒントに

今どきの大学生のカラオケ事情はいかがだったでしょうか。

多様化の時代と言われて久しいですが、主にケータイやソーシャルメディアの普及により、今の若者たちの同調志向を強めている面が、カラオケというシーンにおいては少なくとも見てとれたのではないでしょうか。

この同調志向ですが、逆手に取れば、新しいカラオケや、そのほかのレジャーへのヒントにもなるのではないでしょうか。

今回、若者たちはカラオケでみんなが知る曲しか選ばない傾向があるということでした。そこで、あくまでたとえばですが、その曲がどれだけ頻繁に、どれくらいの年代の人たちに歌われているか、認知度があるか、などのデータを提示してあげれば、「あ、この曲。一見マニアックに見えるけど、こんなに歌われていて、こんなに認知度があるなら、僕も入れてみようかな」などと思い、安心感を持ってもっといろいろな曲にチャレンジすることができるようになるかもしれません。

また、今の若者がひとりで1曲を歌い切るのではなく、マイクをみんなで回して、みんなで歌う傾向があるのであれば、マイク自体をなくしてしまい、部屋の上部ににマイクを吊るして、最初から全員で歌えるようにしておくと、彼らのニーズにより合っているかもしれません。

ここに挙げたものは、あくまでジャストアイデアにすぎませんが、いずれにせよ、今の若者の同調志向の高まりをとらえ、彼ら向けの新消費・新サービス創造の発想の土台にしてみるのもよいのではないでしょうか。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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