特に若者の利用率が高い渋谷や原宿にあるカラオケ店では、わざわざ歌手名や曲名から検索するよりも、履歴を利用したほうが早く歌いたい曲にたどり着けるというのが理由といえる。また、検索が繰り返されることで、どの若者も歌う曲が似通ってきていることも特徴のひとつといえる。
やはりここでも、時間を有効に活用したいという思いや、選曲で「外したくない」といった意識を持っていることがうかがえるのではないだろうか。
これらの事例を読み、若者は「ここまで気を遣うようになったのか!」と思われる方もいるだろうが、その”反動”も出ている。それが、「縛りカラオケ」だ。
「縛りカラオケ」とは、あるひとつのテーマやアーティストの曲に限定して歌うことだ。たとえば、韓流アイドルの楽曲、アニメソング、洋楽、エミネムなど、あるひとつのテーマに限定して、その曲を歌いたい人だけが集まってカラオケに行くというものだ。
従来から「縛りカラオケ」自体は存在したが、今回ヒアリングした印象からも、「縛りカラオケ」を行う若者は増加傾向にあるように思う。
ここまで紹介したような「みんなが知っている曲を歌って場を盛り上げ」たり、「曲の途中であっても周囲に気を遣って演奏を中止にする」など、思う存分、自分の好きなように歌えない環境が背景にあり、年々拡大しているからと感じる。
実際はあまり有名でないアニメソングを歌いたくても、全員が盛り上がれる・知っている曲を歌わざるをえない。だから若者は、空気を読む必要のない、趣味が合う人同士で「縛りカラオケ」をセッティングし、自分の好きな曲を歌うようになってきている。ほかにもひとりでカラオケに行くという「ヒトカラ」も、同様のニーズから生まれたと思われる。
人付き合いでやたらと忙しい今の若者たち
ここまで、若者のカラオケ事情について紹介してきたが、いずれの事例にも共通するのが「気遣い」というワードである。まさに、「空気を読む」ということであるが、ひと昔前であれば、みんなでマラカスやタンバリンを手に持ち、自然と盛り上がるというのが当たり前だったかもしれない。
しかし、スマートフォンやSNSが登場し、その場にいない人とも常時つながるようになった。そのため、興味のない曲が続いたり、ダラダラと知らない曲を歌われたりしようものなら、即座に視線は手元のスマホに移り、歌い手に関心も向けられないということが起こりうる。だからこそ、全員が退屈しないような、気遣いのカラオケが必要となってくるのだ。
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