では、なぜマイクを回す必要があるのか。それは、「空気を読む」ということと関係している。
そこにいる全員が知っている曲なのに、自分1人だけで歌いきるのは「自分勝手」「わがまま」だと思われるのではないのかと気遣い、このような行動をとるそうだ。
やはり、マイクを回して歌われる曲というのは、幼い頃に放送されていたアニメソング、具体的には「おジャ魔女カーニバル!!」やAKB48など全員で盛り上がれる曲が多いそうだ。
また彼らに同行していると、ある機能をいっさい使っていないということに気づいた。その機能とは「採点機能」である。
彼らによると、中学や高校の頃はカラオケに行くたびに採点機能を使っていたが、大学生になると利用する機会は少なくなったそうだ。その理由を問うと、「もし低い点数を友達がたたき出してしまったら気まずいから使わない。とても仲のいい友人とカラオケに行くときにたまに使う場合もあるぐらいで、ほとんど使うことはない。また採点をしている間や、採点の結果を見ている時間がもったいない」とのことであった。
そのほかにも、若者ならではのカラオケの特徴として、曲の途中であるにもかかわらず演奏を停止するというものがある。
その背景には、最後まで歌ってしまうと時間を独り占めしてしまい、ほかの人が歌う時間を奪ってしまうという思いがあるという。つまり、ひとりで時間を使ってしまうのは申し訳ないと感じるからなのだそうだ。
現代の大学生は、SNSの普及や所属するコミュニティの多様化によって、昔と比べて他人と接する機会が確実に増えている。
学業に加えアルバイトやサークルに励む大学生にとって、「暇な時間」は明らかに取りにくくなっている。その中でカラオケに行くとなったときには、貴重な時間を有効活用して、なるべく多くの曲を歌いたい。また、友達にとっても同様に貴重な時間であるため、気を遣いながら歌うべきである……という共通認識が生まれているのだ。
選曲の際に使用するリモコンには、大抵「履歴」という項目がある。
履歴ボタンを押すと、自分たちよりも前に部屋を使った人たちの歌った曲目が一覧となって表示される。若者たちは、わざわざ歌手名や曲名を検索して選曲するのではなく、このような履歴から実際に歌う曲を選ぶ人が多いということもわかった。
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