紀の国屋が廃業「和菓子離れ」加速する5つの理由 「ういろう」「落雁」「ねりきり」知らない10代も

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上生菓子のように、熟練の技を必要とする手の込んだ和菓子も多い。職人が足りない、後継ぎがいないなどの理由で閉店する和菓子屋もたくさんある。そして地元の和菓子屋がなくなってきた。

一方で、需要減を克服するため、新たな挑戦をする和菓子メーカー・店が近年増えている。プチギフトや自分へのご褒美、日常遣いなどの需要を掘り起こす試みをしている店はいくつもある。虎屋や青柳総本家など、ようかんやういろうの個包装化を進める和菓子メーカーや、1個単位で販売する和菓子屋がある。

また最近は、ネオ和菓子と呼ばれる和洋折衷スタイル、あるいは映えるビジュアルの和菓子を販売する店が増えている。東京の虎屋はあんペーストなど、洋に振った商品を次々と開発し、若い世代が入りやすい「トラヤあんスタンド」を展開している。

京都を代表する手土産の八ツ橋には、チョコレートやイチゴミルクなどを挟んだ粋都(すいーつ)シリーズもある。2011年に東京・長原で開業した「wagashi asobi」は、ドライフルーツを入れたようかんで話題を呼ぶ。福島・会津若松市の老舗の会津長門屋は、錦玉羹を組み合わせたインスタ映えする「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 羊羹ファンタジア」が人気だ。

生まれ変わる「おはぎ」「大福」

また、手軽な和菓子でも、おはぎやフルーツ大福などの味のバリエーションとビジュアルのかわいらしさを売りにする商品が流行している。現代人の嗜好とビジュアル重視の傾向に合わせた商品を開発し、販売する和菓子店は増えているのだ。wagashi asobiのように、「ネオ和菓子」を引っ提げ新たに開業する店もある。

名古屋発の「OHAGI3(おはぎさん)」は、ココナッツなどこれまで和菓子ではあまり使われていなかった食材などを使って人気を集めている(撮影:今井 康一)

イチゴ大福の登場が1980年代。ブルボンがチーズおかきを発売したのも1984年。洋菓子がすっかり定着したその頃から始まった、和菓子の洋風化。本格的に変化し始めたのはここ数年とはいえ、やがて定着するネオ和菓子もたくさんあるだろう。

考えてみれば、味噌汁・ご飯と組み合わせるとんかつも、昭和初期は洋食扱いだったのだ。カレーやラーメンも、今や世界で「日本食」として受け入れられている。製造者さえ変化を恐れなければ、和菓子も新しい装いで進化できる。すると、グローバルに受け入れられる「日本菓子」として大きく成長する時代が到来するかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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