紀の国屋が廃業「和菓子離れ」加速する5つの理由 「ういろう」「落雁」「ねりきり」知らない10代も
次々に起こる食のトレンドをリサーチしてわかるのは、ほとんどの流行が外国料理に由来すること。そうした食の多様化は都会だけではない。インド料理店やイタリア料理店は全国各地にある。
移民が多い町も全国各地にあり、本格派の味を地元で楽しむ人もいるだろう。目新しい外国ルーツの食が溢れているから、相対的に和の食文化の出番が減っていく。そうした影響が、和菓子離れにもつながっているのだ。
世代交代が痛手に
4つ目は、消費者の世代交代。半世紀ほど前の高度経済成長期に、都市へ移り住んで核家族を作る人が増え、祖父母と孫が一緒におやつを食べる機会があまりない家庭が珍しくなくなった。食文化の世代間継承が行われにくくなったことが、和菓子の衰退に大きな影響を与えているのではないか。地域密着型の店が多い和菓子は、親しんできた店がない人は食べなくなってしまう可能性もある。
また、高度経済成長期、郊外にできたニュータウンに洋菓子店は珍しくないが、和菓子店はあまり多くない。全国各地で親しまれてきた地域の和菓子店は、日常的におやつに買う、記念日などハレの日に買う、手土産にするなどで便利に使われるが、そうした店が近所になければ、何かあれば和菓子を食べる習慣はできにくい。
平成以降はさらに、地元から離れて暮らす人が増えたことや、共働きが多数派になったことなどから、他人の家庭を訪問する機会も減る傾向がある。それはつまり、手土産に地元の名店の和菓子を持参する機会も減ったことを意味する。
昭和時代は、手土産を通して子供たちが地元や地方の銘菓に触れる機会がたくさんあったが、そうしたモノに触れないまま育つ子供も増えているだろう。そこへ、少子高齢化による人口減少も追い打ちをかけている。
5つ目の要因として、製造者の世代交代の減少が考えられる。和菓子屋のほとんどが小規模の個人店で、手作りを大切にする店が多い。紀の国屋のように、規模が大きくても、味の要となる餡を手作りするところもある。小豆は高温で熱しながら練らなければ、ツヤのあるおいしい餡にならない。和菓子作りは重労働なのだ。
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