ネット広告の「歴史書」を紡いだ彼女が語る困難 十数年前の勉強会資料を「発掘」した意外な場所

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「テクノロジーの世界は登場と普及のタイミングにタイムラグがあるので、最初はどう整理すべきか悩みました。mixiの登場は2003年だけど、実際に流行したのは2008年頃。iPhoneは2007年に発表され、日本での販売開始は2008年ですが、本格的に普及したのは2011年の東日本大震災以降になります。『鎌倉幕府は結局、何年に成立したの?』……じゃないですけど、ネット業界に新しく入った人が教科書にできる本を目指していたので、その辺りは悩みましたよね。

最終的には、インターネットの歴史をつくってきた人間の『欲望』にフォーカスし、ホームページブーム、ブログブーム、SNSブームといったサイクルごとにまとめると、流れもわかりやすいなと考えました。そうして完成させた企業研修用のドキュメントをもとに、勉強会ではあまり盛り込めなかった技術的な話なども加筆したものが、今回の書籍なんです」

資料集めはまさに「発掘作業」

ネットが人の集まる情報通信メディアである以上、そこには広告やマーケティングが存在し、その歴史をひもとくことはインターネットビジネスの歴史をひもとくことになるわけだが、その資料集めは先述したようなネット業界特有の事情などもあって難航したようだ。

「勉強会の資料づくりのため、最初は2000年代前半の資料を、社内外向けにインターネット勉強会していた人たちからかき集めようとしました。でも、実際はほぼ出てこなかったんです。

ハードディスク容量が少なかった2000年代前半は、古いファイルが邪魔になりやすいうえ、変化も激しいインターネットの世界では少しでも古い情報を出すと『遅れている』『間違っている』と思われやすいため、みんなわりと躊躇なく古いファイルは捨てていたんですよ。20人から30人ほどに声をかけたのですが、最終的に2000年代前半のファイルを保有していたのは2人でした」

ハードディスクの容量がテラ時代に突入して10年余りだが、そもそも2000年代前半といえばYouTubeも上陸前。当時の勉強会資料や広告メニューを記したファイルなどを提供してくれたのは、定年退職や転職などで、すでにネット業界を去っていた人たちだったというから面白い。

次ページただ、森永氏も、2005年以降のデータは保存していた
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事