移住増も喜べず「石垣島」地元タクシーが語る苦悩 現地を訪れてわかった地元住民の複雑な心情

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石垣島が属する八重山支部には289台、宮古支部には184台のタクシーが登録されている。ちなみに石垣市には約5万人、宮古島市には約5万5000人が暮らすという商圏だ。沖縄県ハイヤー・タクシー協会・事務局長の津波古修さんが、沖縄本島と離島のタクシー事情の差異をこう解説する。

「電車やバスの利用者が少ないという交通インフラの関係から、本島でもタクシーは身近な存在ですが、離島ではそれがより顕著です。初乗りも指定地域ということもあり470円で、日常生活の中で利用しやすい金額設定になっています。島の面積を考えてもタクシーの稼働台数は多いといえるでしょう。観光客のパイ、ということを考えれば、業界の中では『本島よりも離島のほうが稼げる』といった意見も耳にします」

急速な変化ゆえに地元住民との軋轢も

2011年時点で約65万人だった石垣島への観光客は、2019年には2倍以上となった。それに伴い飲食店やホテルが急増し、タクシーにも恩恵が生まれた。

だが、急速な変化ゆえに地元住民との間に小さくないゆがみも生まれた、という声も聞こえてくる。20年以上、この島で働くベテランドライバーの山添さん(仮名・60代)はこう感嘆する。

「この4、5年で治安は間違いなく悪くなったね。結局、観光業や飲食業はよそから来た人らが主にやっている商売。関東や関西からヤクザや半グレが大勢移住してきて、キャバクラなんかもバンバン増えた。なぜか焼肉屋なんかも多くてね。結果、家賃や物価も驚くほど上がっていった。この島が“食い物”にされた、と感じる地元民も少なくないんよ」

観光の発展と、地元住民の軋轢。石垣島に限らず大なり小なり、離島を取り巻く状況は類似する点がある。例えば世界自然遺産に登録される秘境・西表島、人気の観光地である竹富島、小浜島にも「星野リゾート」などの有名ホテルが続々と進出している。10代、20代を中心に雇用が生まれた面もあるが、それでも7割近くの若者は島を出ていくという状況は今なお変わりはない。

西表島に住む地元民は「マリンスポーツや観光ガイド、飲食やホテルなどに勤めるのはほぼ外から来た人間たち。これはほかの島も同じ」と話す。

島民の中でも、観光誘致に尽力する層と、反対する層はくっきり分かれていた。タクシーに目を向けると、竹富島、西表島では予約制で利用が可能だったが、地元民の利用はほぼないという。

西表島の玄関口の1つであるデンサターミナル(筆者撮影)
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