移住増も喜べず「石垣島」地元タクシーが語る苦悩 現地を訪れてわかった地元住民の複雑な心情

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タクシードライバーたちの話では、石垣島の経済はかなり観光に依存する部分が大きいという。石垣市の調べによれば、2019年には約147万人の観光客が訪れた。そのうち島を訪れる海外からのクルーズ船だけでも36万人に上り(最多は台湾からの約8万5000人)、観光の推計消費額は977億円とされている。この時期はタクシーの売り上げも高水準だった、と「先島交通」の玉城喬代表が回顧する。

「コロナ前の台湾、中国からのクルーズ船の観光客は、時間チャーターでのタクシー利用がメインでした。売り上げは大幅に伸び、1日で3万円を超えてくることも珍しくなかった。2013年に空港が移転し、空港への送迎も1000円程度だったのが、今では2500円程度へ伸びた。この島は『ちょい乗り』で、ワンメーター、ツーメーターの地元の人の利用が圧倒的に多かったんです。

それだけ地域インフラとして機能しているということですが、売り上げという点では観光客の恩恵はとてつもなく大きかったわけです。観光客が多すぎて、病院や役所、スーパーなどでも利用する地元の方から『夕方はタクシーが捕まえられない』という声があったほど。今年の3月から少しずつ客足は戻りつつありますが、それでも平均的に1万5000円程度です」

夜でもかなりの台数のタクシーが走っている

石垣島でタクシー利用は流しが基本だ。コロナ前よりはだいぶ少ないというが、夜でもかなりの台数が走っており、日付が変わってもテールランプが街から消えることはない。中心地にある居酒屋や飲食店は、予約なしに入るのはほぼ不可能なほど活況だった。そして、お店の利用者たちがタクシーを利用して、次の店へと移っていく。

付け待ちがあるのは、空港と竹富島や西表島などへ向かう船乗り場となる離島ターミナルのみだ。

船乗り場で付け待ちをするタクシー(筆者撮影)

離島ターミナルで手持ち無沙汰そうにしているドライバーに「タクシーの台数が多いですね」と話しかけてみた。すると、「人口5万人の島やから馬鹿にできへんで」と軽快な口調で切り返してくる。

「コロナになる前は全然タクシーが足りてなかったから。石垣島には時間が読めないバスなんか乗ったことない、という人も多いよ。代行なんか使うより、タクシーのほうが便利で安い。たぶんね、本島よりも石垣のほうが稼げた。でも、ドライバーがいないから車が稼働できへん。

私もそうやけど、この島のドライバーは農業・漁業だけで食えない人、定年退職して小遣い稼ぎ目的の人、年金暮らしの人が大半。だから少し余裕があるからギスギスはしてないかな。ホテル業や飲食、マリンレジャー関係の仕事をする移住者も増えているから、そういう人たちの利用にも助けられている」

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