「まるちくタクシーグループ」の営業部長、下地一世さんは宮古島で生まれ、東京や沖縄本島などを経てこの島に出戻った。現在の宮古島の状況をこう見ている。
「これだけ小さな島に空港が2つもある。ホテルの建築ラッシュも続き、来年は『ヒルトンホテル』、2024年に『ローズウッド』が開業予定です。つまり、それだけ市をあげて観光へ注力しているというわけです。
コロナ前はクルーズ船で1日2000人の外国人の方が平良港に来て、貸し切りでタクシーを利用してくれました。空港から中心地まででも1000円程度ですから、売り上げ的にはすごく大きかった。
30年前に『東急ホテル&リゾーツ』ができ、それで観光がスタートした島です。昔は東京へ営業に行っても、『石垣島は知ってるけど、宮古島は……』といった程度の認識だった。それが今は露出も増えて当時とは雲泥の差で、飲食も含めた観光業が島の基幹産業となりつつあります」
「宮古島バブル」で地価が高騰
その一方で「宮古島バブル」とも言われるほどアパート建設が続き、地価は高騰した。労働力不足、建築費の高騰もあり、地元民たちは新築一戸建ての住宅を建てられなかったという声もあった。移住者は増加傾向にあるが、純粋な島民は緩やかに人口減が続き、観光業に尽力する人々も高齢化している面もある。
下地さんが続ける。
「平良地区を除けば人口は減り続けているので。とくに伊良部島に関しては、35年前は9000人を超えていたのが、今は半数近くまで減っている。何とかして若者が働きたい環境を作らなければいけないという、強い危機感があります。タクシーも歩合制だけではなく、固定給だったり魅力あるシステムを作るといった工夫を凝らなさいとこの流れは止まりません」
宮古島観光協会の関係者は、観光客や移住者が増えた弊害もあると嘆く。
「一言でいうなら、半グレの巣窟といえるほど素行が悪い人間が増えたことです。これは宮古に限らず、石垣島でも同様のことがいえます。『与那覇前浜ビーチ』には、タトゥーだらけの半グレがゴロゴロしている。
協会でも問題視して、数年前には協議をしたこともあります。逮捕者も出た影響か、一時期ほど表立った活動はありませんが、まだまだ残っている。彼らが経営に携わっているといわれる飲食店なんかはすごく流行っており、地元で真面目にやっているお店なんかが苦しんでいる状況をみるとジレンマもありますよ」
石垣島や宮古島など沖縄の離島では、本島をしのぐほど観光への依存度が高まっている。雇用が生まれ、街は潤ったが、失ったものも確かにあるのだろう。ドライバーたちの声から、そのバランスや落とし所に、敏感な地域という印象をうけた。春先以降、ようやく国内客の客足が戻りつつある状況だが、必ずしも手放しに喜べない島民も少なくないのかもしれない。
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