今回の防衛予算が膨張した原因は導入の正当性も、費用対効果も怪しい対空型無人機グローバルホーク、水陸両用装甲車AAV7、ティルトローター機「オスプレイ」などの高価な米国製兵器の導入が理由だ。これらは本年度予算で調査予算が要求されていたが、その執行も終わらないうちに概算要求で予算が要求されている。
しかも概算要求では調達数は未定で要求が行われる異例の事態であり、グローバルホークにいたっては具体的な未だに運用部隊すら決まっていないというデタラメぶりだ。まるで米国の兵器産業に急いで貢がないといけない理由があるかのような慌てた調達ぶりだ。
なお、個々の具体的な指摘については過去に詳細を記した。AAV7については「尖閣有事に水陸両用車AAV7は役に立たない」をご覧いただきたい。また、オスプレイ、グローバルホークについては「オスプレイの拙速導入は、安倍政権による濫費」を参考にしていただきたい。
補正予算を「活用」しても、これらの装備の調達によって防衛費は圧迫され、他の装備の維持・整備費、訓練・教育費などが圧迫される。例えば陸自予算から今回5機調達されるオスプレイは516億円が要求されている。だが陸自のヘリ予算は毎年概ね250億~350億円程度にすぎない。オスプレイの調達予算はその2倍だ。しかもヘリの定数を減らすわけではない。多くの予算が削られて、調達現場は悲鳴をあげている。
しかもオスプレイの運用費はヘリよりも格段に高い。また中期防衛力計画で予定されているオスプレイ17機を運用するために200名の人員が新たに必要であり、その人件費も毎年かかる。オスプレイには利点もあるが欠点もある(過去の記事参照)。それを詳細に検証もせず、初めに調達という結論ありきで調達を決定してしまった。
かえって自衛隊の戦力を毀損する可能性
今後これらの米国製兵器の運用には莫大な経費がかかるが、筆者はそれに見合うリターンは期待できないと考える。かつて陸上自衛隊は攻撃ヘリAH-64アパッチを62機導入するはずが、たった13機で終了した。偵察ヘリOH-1に至っては250機調達する予定がわずか34機で打ち止めになっている。これらは調達コストも維持費も高額だった。これらの失敗から何も学んでいない。
今回導入する装備も、調達が中止になる可能性もある。その場合中途半端な部隊の運用の費用対効果はますます悪くなる。またその維持・運用コストが他の装備の調達、運用予算を圧迫することになり、かえって自衛隊の戦力を毀損する可能性が高い。
繰り返すが、震災復興加速と称して補正予算を装備調達に充て、防衛費と来年度予算の伸びを抑制したかのようにみせることは、納税者に対する背信行為といわざるをえない。
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