誰のためのMBOか 問われる“上場”の意味
「今起こっている変化は入ったことのないジャングル。未踏のジャングルに踏み入るにあたり、株主の利益を毀損する恐れがある」
2月3日。レンタルソフト最大手のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が開いたMBO(経営陣による企業買収)の発表会見で、増田宗昭社長は断言した。次世代「TSUTAYA」や中国進出など、次の展開に上場は不要、とでも言いたげだった。
CCCに限らない。今年に入り、引っ越しのアートコーポレーションなど、上場企業によるMBOと非上場化が相次いでいる。
なぜ今MBOが続くのか。
上場のデメリットとして挙がるのが、株主が短期的利益を求めるため、抜本的な事業再編をしづらいことだ。今やIR費用も無視できない。半面、キャッシュが積み上がり資金調達の必要がない企業も多く、経営者が非上場化を進んで選んでもおかしくない。
プレミアムは平均3割
MBOが世間の耳目を集めた契機は、2005年、アパレル大手のワールドとされる。それも約2100億円という規模に、産業界からは驚きの声が上がった。その後も上場企業のMBOが続き、06年から10年の5年間で125件に上った(野村証券金融経済研究所調べ)。
が、MBOを発表しても、すべて順調に成立するケースばかりではない。特に衝突しやすいのが、TOB(株式公開買い付け)に伴う買付価格だ。