「会社の目標が"利益"」では人は本気で頑張れない 山口周さん×中川淳さん対談(4回目)

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中川政七商店の中川淳氏と独立研究者の山口周氏による対談、4回目です(撮影:香川優子)
何のために働くのか。何のためにこの仕事や会社はあるのか──ビジョンの重要性が以前にも増して注目される今、「ビジョンは経営資源であり、人生の武器になる」と喝破するのが、中川政七商店の中川淳氏と独立研究者の山口周氏だ。
経営者やリーダー、そして1人ひとりが仕事のうえでビジョンとどう付き合うのか。今回は1人ひとりが働くうえでのビジョンとの付き合い方を、『ビジョンとともに働くということ』より一部抜粋、再構成してお届けする。

ビジョンはメンタルを守るセキュリティー

中川:僕自身、ただ黒字を出すことだけを目指していたのではやっていけないと悟ったのが、ビジョンを考えるようになったきっかけでした。

山口:当面の利益を目的にして儲かっている会社もあるにはあるんですが、組織としてはそれでよくても、所属している個人としてはつらい状況ですよね。組織が、ただひたすら「コストを下げる」「売上を増やす」ことにしか目的を見いだせないのであれば、個々のビジョンは持ちにくいし、自分の仕事に意味を感じられないと、人間は壊れてしまいます。

少し前に亡くなった英国の人類学者デヴィッド・グレーバーは『ブルシット・ジョブ』という著書のなかで、自分の仕事に何の意味も意義も感じていない人、つまり「クソ仕事」に従事していると感じる人が世の中の50%を占めていると主張しました。

いまの日本社会は、昭和30年代や40年代にくらべてはるかにみんなが経済的には豊かになりましたが、メンタルが壊れてしまう人は昔より多いでしょう。自殺者数も増えてしまいました。仕事に意味や目的を持ちにくくなっていることも、その一因として見逃せないだろうと思います。

そうだとすれば、所属する組織に大きなビジョンがあることは、そこで働く人々にとってある種のセキュリティーになるとも言えるのではないでしょうか。ビジョンがあると経営がうまくいくということに加えて、働く人たちのメンタルや命を守ることにもつながるわけです。

次ページビジョンは働き方を選ぶうえで有効なツールの1つ
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