「会社の目標が"利益"」では人は本気で頑張れない 山口周さん×中川淳さん対談(4回目)

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山口:しかし、「パーパス」というバズワードが登場して注目されていることからもわかるように、目的そのものを見失っている企業がいまは多いのでしょうね。そこには資本主義の限界という側面もあるので、これは日本企業だけの問題ではありません。

アメリカで80年代ぐらいからメンタルヘルスの問題が浮上してきたのは、そんな流れの先駆けだったのかもしれません。日本も20年遅れぐらいで、やはりメンタルの問題が大きくなってきました。とはいえ、カウンセリングはアメリカほど盛んにはなっていません。その意味では、自らメンタルを壊さないような働き方を選ばなければいけないとも言えるでしょう。ビジョンは、そのための有効なツールの1つだと思います。

ですから、会社のビジョンを個人がつくるわけにはいきませんが、転職するなら、なるべく明確なビジョンを持つ会社を選ぶということは考えていい。あるいは、自分自身の個人的なビジョンを明確にすることで自ら身を守ることもできると思いますよ。

キャリアやビジョンの持ち方は年代によって変わる

山口:ところで淳さんの個人としてのビジョンは何ですか?

中川:それが難しいんですよね。ずっと迷っています。とりあえず、いま現在いったん仮置きしている個人のビジョンは「志を持って楽しく正しく戦い続ける」という感じ。

山口:目標とするビジョンというよりは、プロセスバリュー的なものですね。

中川:そうなんです。会社には固有のビジョンを与えられるんですが、個人では「これを成し遂げたい!」というテーマがあんまり思いつかないんですよ。

中川政七商店にいれば中川政七商店のビジョンを達成するために行動するし、もし会社が変われば、そこのビジョンを描いてそれを達成するためにやるでしょう。自分がそんな感じだから、組織のビジョンと個人のビジョンは「重なり合い」というイメージを持っていたのかもしれませんね。

山口:たぶん、その悩ましさは年代によっても違うのだろうと思います。以前、リクルートワークス研究所の大久保幸夫さんが「キャリアは前半と後半でまったく種目が変わる。前半は激流下り、後半は山登り」とおっしゃっていて、とてもいい表現だと思ったんですよ。前半は自分でコントロールできない激流下りみたいな日々だから、岩にぶつかったり転覆したりしないようにしながら、とにかく生き残らなくちゃいけない。それをやっているうちに、いろんなスキルが身についたり、仲間ができたり、信用ができたりしていくわけです。

その激流を下っていくと、いずれはなだらかな流れになる。そのまま海に出ちゃう人も多いんですが、なだらかな川面から周囲を見渡すと、いろんな山があることがわかるんですよ。だらだらとそのまま海に出ていかない人は、そこで「俺はあの山に登ろう」と自分で決める。たとえばファイナンスの専門家になって経営をサポートする立場になろうとか、もちろんなかには経営者になろうとする人もいるでしょう。何であれ、登る山を決めればそのためには何をすべきかがわかりますよね。

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