就活生はなぜ「研修制度」について質問するのか 採用現場でも発揮される「いい子症候群」的行動

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なお、若者との意思疎通不全が、笑い話で済まなくなるケースもたまにある。最も深刻で、かつ多発中なのは、若者がどうしたらいいかわからないまま仕事を抱え、取り返しがつかない状態になるまで放置してしまうケースだ。筆者もここ数年で本当に多く耳にするようになった。

そんなこともわからないのかと思われたらどうしよう

すぐに上司か先輩に相談すればなんてことはないのに、たったそれだけのことをためらい、抱え込んでしまう。最大の理由は、「そんなこともわからないのかと思われたらどうしよう」だ。

相談もせずに放置するなんて、その先仕事がどうなるか想像もできないのかと言いたくなるが、彼らにとっては、「そんなこともわからないのか」と思われることのほうが重大なのだ。

むろん本件も同期には早々に相談している。しかし、そこは同じ新人ちゃん。すんなり解決策が出てくるはずもない。そして再び抱え込み、時限爆弾の時計の針は進む。

私は『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の中で、今の若者たちの行動原理や心理は「いい子症候群」というフレーズで象徴できると書いた。いい子症候群のさまざまな特徴は本の中で詳しく分析しているが、その1つが「均等であること」をものすごく重視する点だ。裏を返せば、差をつける行為、たとえば競争をとても嫌う。

採用する側の皆さんの中には、若者たちの本音がまったく見えず、戸惑う方も多いかもしれない。ただ、就職活動は大学生にとって最大の競争イベント。苦手な行為に対し“何が正解か”を模索する日々が続く。あなたが「正解なんてないんだよ。本当のあなたが知りたいだけだから」と願い、行動すればするほど、ますます「演技する」という“過去問で習った正解”を繰り出すいい子症候群の若者たち。

採用担当者の皆さんは、それが彼らがこれまで培ってきた生存本能のなせる業だということを、まずは理解してあげてほしい。また、もちろん今の若者はいい子症候群ばかりではない。それ以外の人材に巡り合うまで、粘り強く採用活動をアップグレードするしかない。

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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