なお、若者との意思疎通不全が、笑い話で済まなくなるケースもたまにある。最も深刻で、かつ多発中なのは、若者がどうしたらいいかわからないまま仕事を抱え、取り返しがつかない状態になるまで放置してしまうケースだ。筆者もここ数年で本当に多く耳にするようになった。
そんなこともわからないのかと思われたらどうしよう
すぐに上司か先輩に相談すればなんてことはないのに、たったそれだけのことをためらい、抱え込んでしまう。最大の理由は、「そんなこともわからないのかと思われたらどうしよう」だ。
相談もせずに放置するなんて、その先仕事がどうなるか想像もできないのかと言いたくなるが、彼らにとっては、「そんなこともわからないのか」と思われることのほうが重大なのだ。
むろん本件も同期には早々に相談している。しかし、そこは同じ新人ちゃん。すんなり解決策が出てくるはずもない。そして再び抱え込み、時限爆弾の時計の針は進む。
私は『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の中で、今の若者たちの行動原理や心理は「いい子症候群」というフレーズで象徴できると書いた。いい子症候群のさまざまな特徴は本の中で詳しく分析しているが、その1つが「均等であること」をものすごく重視する点だ。裏を返せば、差をつける行為、たとえば競争をとても嫌う。
採用する側の皆さんの中には、若者たちの本音がまったく見えず、戸惑う方も多いかもしれない。ただ、就職活動は大学生にとって最大の競争イベント。苦手な行為に対し“何が正解か”を模索する日々が続く。あなたが「正解なんてないんだよ。本当のあなたが知りたいだけだから」と願い、行動すればするほど、ますます「演技する」という“過去問で習った正解”を繰り出すいい子症候群の若者たち。
採用担当者の皆さんは、それが彼らがこれまで培ってきた生存本能のなせる業だということを、まずは理解してあげてほしい。また、もちろん今の若者はいい子症候群ばかりではない。それ以外の人材に巡り合うまで、粘り強く採用活動をアップグレードするしかない。
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