「良かれと思って」発したその一言が致命的だった 若者に「期待しているよ」と言ってはいけない

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

若者だって、できることならやりたいことを見つけたいと思っている。でも、できない。見つかる気もしない。というか、見つけた人と自分とは明らかに精神構造が違う。自分はそっち系じゃない。そう思っている若者に、ストレートな正論を打ち込んでも残念ながら意味はない。

期待=バイアス満載の「圧」ワード

最後の第1位は「期待しているよ」「君ならできる」だ。

期待という言葉には、本来「自分にはできないこと」、あるいは「自分はできるけどやらないこと」を相手にしてもらう、というニュアンスがある。そして相手にしてもらうその行為は、直接的あるいは間接的に自分の利益になる、というニュアンスも内包される。

それって期待じゃなくて「お願い」じゃないか、と思うだろう。そのとおりだ。それなのに「お願い」と言わないのは、「期待」にはもう1つの側面があるからで、それは目上の人が目下の人に向かって使う言葉だからだ。本当は「お願い」なのに、カッコつけて上から「期待」と言う。若者からすれば、そんなバイアス満載の「圧」ワードを素直に受け取れるはずがない。

5月25日(水)に金間大介教授の『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』刊行記念オンラインイベントを実施します。詳しくはこちら(写真:金間大介氏提供)

もう1つの「君ならできる」がNGとなる理由は、やはりこれもプレッシャーをかける言葉だからだ。平たく言えば「ハードルが上がる」状態になる。声をかけた側としては、自信を持ってほしくて「君ならできる」と言ったのだろうが、若者にとってみれば、その想い自体が「圧」となる。

2回にわたって紹介したNGワードは、いずれも良かれと思って発する、大人にとってのポジティブ・ワードである。人生の先輩として決して間違ったことは言っていない。が、残念ながら少数の意識高い系にしか響かないだろう。そして、そんな意識高い系は、すでにこれらの言葉を十分に理解している。よって、ほぼすべての若者に対して無意味な言葉となるのだ。

金間 大介 金沢大学融合研究域教授、北海道医療大学客員教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士(工学))、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、東京農業大学准教授等を経て、2021年より現職。専門はイノベーション論、マーケティング論、モチベーション論など。若手人材や価値づくり人材の育成研究に精力を注ぐ。大手企業のほか、医療機関や社会福祉法人との連携も多数。主な著書に『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)、『静かに退職する若者たち』(PHP研究所)、『ライバルはいるか?』(ダイヤモンド社)など。一般社団法人WE AT副代表理事、一般社団法人日本知財学会理事も務める。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事