「良かれと思って」発したその一言が致命的だった 若者に「期待しているよ」と言ってはいけない

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若者だって、できることならやりたいことを見つけたいと思っている。でも、できない。見つかる気もしない。というか、見つけた人と自分とは明らかに精神構造が違う。自分はそっち系じゃない。そう思っている若者に、ストレートな正論を打ち込んでも残念ながら意味はない。

期待=バイアス満載の「圧」ワード

最後の第1位は「期待しているよ」「君ならできる」だ。

期待という言葉には、本来「自分にはできないこと」、あるいは「自分はできるけどやらないこと」を相手にしてもらう、というニュアンスがある。そして相手にしてもらうその行為は、直接的あるいは間接的に自分の利益になる、というニュアンスも内包される。

それって期待じゃなくて「お願い」じゃないか、と思うだろう。そのとおりだ。それなのに「お願い」と言わないのは、「期待」にはもう1つの側面があるからで、それは目上の人が目下の人に向かって使う言葉だからだ。本当は「お願い」なのに、カッコつけて上から「期待」と言う。若者からすれば、そんなバイアス満載の「圧」ワードを素直に受け取れるはずがない。

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もう1つの「君ならできる」がNGとなる理由は、やはりこれもプレッシャーをかける言葉だからだ。平たく言えば「ハードルが上がる」状態になる。声をかけた側としては、自信を持ってほしくて「君ならできる」と言ったのだろうが、若者にとってみれば、その想い自体が「圧」となる。

2回にわたって紹介したNGワードは、いずれも良かれと思って発する、大人にとってのポジティブ・ワードである。人生の先輩として決して間違ったことは言っていない。が、残念ながら少数の意識高い系にしか響かないだろう。そして、そんな意識高い系は、すでにこれらの言葉を十分に理解している。よって、ほぼすべての若者に対して無意味な言葉となるのだ。

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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