「自責思考こそ常に最善」と思う人の大いなる盲点 行き過ぎた「自罰思考」で自らを追い詰めない為に

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「他責思考」の最初のメリットは「自分を守れる」です。でも、だからこそ「気が引ける」と考える人もいます。実際にAさんは「他責思考」を数週間続けたものの、このように打ち明けました。

「他責な社員ばかりだと、会社は潰れてしまうんじゃ……」

それでも私は「他責思考は、あなたにとっても会社にとっても有効です」と断言しました。なぜならAさんが、自社の社長から感謝されたという話をしてくれたからです。

Aさんを苦しめていたクライアントは、Aさんの前の担当社員のBさんにも同じようにきつい対応をしていました。けれど、Bさんはじっと「大事なクライアントだから」と我慢に我慢を重ね、体調を崩してしまいました。実は、その前のCさんもそうだったようです。

原因が特定できないためAさんの会社からは「なんとか頑張れ」としか社員に言えず、有効な手を打てずにいました。Aさんが少しずつ「他責思考」を発揮して「あのクライアントのおかしい点」を感情的にならず上司に報告するようになると、会社は動けるようになります。

事実を淡々とレポートするAさんの言葉やメールの履歴が証拠となり、社長が「これ以上うちの社員にきつい対応をしたり、契約外のことを要求したりするのであれば契約は打ち切ります」と宣言。

こうしてクライアント側の担当者は異動になり、関係は改善されました。この結果を生み出したのはAさんの「他責思考」であり、もっと言えば「他責思考をしよう」と決めた勇気です。「他責思考」が守るのは、あなただけではありません。あなたの会社や同僚も守ることだってあるのです。

「自責思考」と「他責思考」は使い方次第

ここまで「自責思考と他責思考のどちらが大切か」と、単純化してきました。でも実際は「自責思考」と「他責思考」はけんかするものではありません。

大切なのは「自責思考」と「他責思考」の使いどきを理解しておくことです。

次ページ「自責思考」を発揮する時とは?
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