「自責思考こそ常に最善」と思う人の大いなる盲点 行き過ぎた「自罰思考」で自らを追い詰めない為に
私の顧客であるWebディレクターのAさん(女性・ 20代後半)は、取引先に「脳内請求していますよ」と教えてくれました。
Aさんは社内のデザイナーやエンジニアと、HP制作を依頼するクライアントとの板挟みでした。契約書に「ここまでの範囲がサービス内容です」と記した契約を締結したにもかかわらず、クライアントは「ここを修正してくれ」とどんどんリクエストを出してきます。「期日までには難しいです。追加費用を……」と話し始めると舌打ちすらするとか。
そこでAさんが発明したのが「脳内請求」です。
「はい、そのふてくされた態度は、こちらの心によくないので慰謝料をいただきます」と「脳内で請求する」ことで自分を守っていました。
この事例だけ見ると「Aさんはおかしな人だ」と距離を置きたくなるかもしれません。確かに、職場でこんなことを口に出していたら人は遠ざかっていくでしょう。
しかしAさんが「他責思考」で「脳内請求」しているのは、自分の「心の中」だけですから問題ありません。「他責思考」は「心の逃げ場」であり、いわば「心のゴミ箱」。ゴミ箱に入れたゴミをわざわざ人に見せたりしないように、「心の逃げ場」を誰かに見せたり評価を受けたりする必要はないのです。
Aさんが自分を守るために心の中でつぶやく行為を「おかしい」と感じた人は健康で、今は自責思考だけでうまく行っているのだと思います。
一度「人のせい」にすると「自分のせい」に戻れる
「まぁ、他責思考も一理あるかもな。でも、対処療法であって逃げでしかないよね。他責思考が癖になっちゃいそう」
「他責思考」を勧めていると、こう言われることもあります。しかし「他責思考」を実践したAさんにはこんな変化が訪れました。
「脳内請求を繰り返していたら、自分の本来の仕事の意義を思い出したんですよ。クライアントのリクエストが後から出ないように仕事を設計する。手戻りがないようにする。クライアントや上司の説教ではなく自分で気づけたから納得できましたし、今では自責思考ができています」
Aさんは一度「他責思考」に避難したことで「自責思考」に戻れたのです。
「他責思考で、いったん落ち着けたんだと思います。すべて私に原因があると考えるのは潔い気もしますが、思考停止していただけ。問題と自分を切り離して考えないと、解決しないですよね」
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