自傷行為を繰り返す13歳少女を「追い込んだ」もの アメリカで広がる10代のメンタルヘルス危機

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新型コロナ禍が10代のメンタルヘルス悪化に拍車をかけたのは確かだ。しかし、問題はそれ以前から存在し、人種、民族、地域、社会経済的な格差を超えて広がっていた。12月には、アメリカの公衆衛生局長官が異例の警告を行っている。

精神疾患の増加レベル、セラピストや治療方法の深刻な不足、問題に対する研究が不十分である状況を指して、病院や医師の団体からは「国家的緊急事態」との声が上がるようになっている。

「若者の教育水準は上がっており、妊娠や薬物使用は減り、事故やケガで死ぬことも減った」。カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者キャンディス・オジャーズは、「子どもたちは多くの面で素晴らしい成果を上げているが、不安、うつ、自殺には深刻な傾向が見られる」と話した。「私たちは問題を解決する必要がある。この子たちにとっては生きるか死ぬかの問題なのだから」。

SNSやスマの影響は?

この危機は、ソーシャルメディアの台頭と結び付けられることが多いとはいえ、それを裏付けるデータは限られており、調査によっても結果が食い違うことある。スマホから受ける影響は、個々人でばらつきがあるようだ。連邦政府の調査によると、10代の若者は睡眠と運動の両方が不足し、友人と一緒に過ごす時間も減っていることがわかっている。

いずれも健全な成長に欠かせないものだ。こうした状況が組み合わさった結果、一部の若者で起きているのが一種の認知崩壊であり、それは不安、抑うつ、強迫行為、自傷行為だけでなく、自殺に至ることもある。

若者のメンタルヘルス悪化については、ある疑問も持ち上がっている。これらの問題は思春期特有のものでありながら、これまで単に見落とされていただけなのか、あるいは過剰診断で若者の精神疾患が増えたように見えるだけなのか、という疑問だ。しかし、自殺未遂や自傷行為で緊急治療室(ER)に運ばれる若者が増えている以上、脅威の実態が大きく変化していることは疑いようがない。

Mは、アメリカの青少年に起きている変化を探るニューヨーク・タイムズの1年にわたる取材に応じてくれた数十人のティーンエイジャーの1人だ。ニューヨーク・タイムズはMとその家族から、Mのスクールカウンセラーと話す許可を得た。Mの医療記録はニューヨーク・タイムズと共有され、家族の了解を得た上で、Mのケアに関与していない外部の専門家にも意見を求めた。

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