自傷行為を繰り返す13歳少女を「追い込んだ」もの アメリカで広がる10代のメンタルヘルス危機
近くの郊外の町では、エラニフ・バーネットの両親が娘の絶望を理解しようともがいていた。明るく、勉強好きで、優雅な雰囲気の体操選手でもあったと、メイヨークリニックで婦人科医をしている父のタトナイ・バーネットは幼いころの娘を回想して語った。「もっと子どもが欲しいという気分にさせてくれるような子どもでした」。
だが、エラニフが9歳になった2014年、夫婦の関係は崩れ始め、エラニフも足首を負傷した。痛みが慢性化したため、エラニフは体操をやめることになり、暗い時期を過ごすことになった。
2019年秋、エラニフは大うつ病性障害と診断された。
エラニフは治療を開始し、投薬を受け、ユタ州の病院の入院式アウトドア治療プログラムに参加した。「私たちは自らと向き合いました。親としてのあり方も見つめ直し、エラニフが置かれた状況と向き合おうと様々なことを変えました」とバーネット。
臨床ソーシャルワーカーでもあるエラニフの母タニア・ガインザには、世代的な傾向が見えていた。ガインザには、期待に応えられないのではないかという恐怖感に苦しむ若者のカウンセリングを何年間もわたって行ってきた経験があった。地元の少年が何の前触れもなく自ら命を絶ったという話も耳にしていた。
「この時代、この世代には、彼らを危険にする何かがある」とガインザは話した。
エスカレートする自傷行為
パンデミックが本格化し、8年生の授業がリモートに完全移行した2020年秋のある日、リンダはMがベッドで泣いているのに気がついた。Mは死にたいという本音を漏らした。
オンラインで見つけたセラピストとの何度目かのセッションの後、「セラピストは秘密を口外しないという約束を破って」こう伝えてきたという。「親御さんにはナイフのことを知っておいていただく必要があります」。
トニーはMのベッドサイドスタンドから、ポケットナイフと柄に猫の肉球の絵がついた大型のカッターナイフを見つけ出した。Mはこれらのナイフをアマゾンでこっそりと買い、自分の体を切りつけるのに使っていた。ある夜、Mの自傷行為はエスカレートし、赤いヘアゴムで自分の首を絞めた。「どれくらい耐えられるか試してみようと思った」。