自傷行為を繰り返す13歳少女を「追い込んだ」もの アメリカで広がる10代のメンタルヘルス危機

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2021年の2月、Mは丸1日を使ったグループセラピーに参加した。カルテによると、クリニックの精神科医は、Mが自傷行為をやめられないと言っていることを家族に知らせた。

それを受けてリンダは「家のナイフをすべて処分」し、錠剤もすべて隠したという。だが、Mは別の手段で自らの体を傷つける行為に出た。重さ8ポンド(約3.6キログラム)のバーベルを自分の頭に打ち付けたのだ。

Mはうつ病と診断され、抗うつ薬を処方されて退院した。ネット通販薬局大手エクスプレス・スクリプツによると、成人患者に対する抗うつ薬の処方は2015年から2019年にかけて15%増加したのに対して、十代の患者に対する処方は38%も増加している。

精神衛生カウンセラーのもと改善したが

Mはその後、注意欠陥性障害(ADHDではない)とも診断され、中枢神経刺激薬メチルフェニデート(商品名はリタリンやコンサータなど)を処方された。

Mの中学校には訓練を受けた精神衛生カウンセラーが在籍していた。2021年3月、Mは初めてカウンセラーのもとを訪れた。このときMは自分の絶望感と不安感を10段階中の9と評価。学校に戻る恐怖、落ちこぼれる恐怖、死にたいという願望について話した。

Mの精神状態は改善した。1カ月後のセッションで、Mは絶望感と悲しみを10段階中の5、不安感を同2と評価した。とはいえ、揺り戻しの危険もあるので注意するようにと、カウンセラーは両親に伝えている。

エラニフ・バーネットという少女が薬物の過剰摂取で死んだということをリンダが人づてに聞いたのは、ちょうどその頃だった。エラニフは「ごめんなさい、もう耐えらない」というメモを書き残していた。

エラニフの母は、まだ意識があったエラニフを急いで病院に運んだ。エラニフは病院で過剰摂取に対する後悔と自らが感じている恐怖を口にしたが、4日後に15歳で息を引き取った。

Mが森へと逃げ込んだのは、その数週間後、リンダの頭にまだこのニュースが残っていたころだった。

(執筆:Matt Richtel記者)
(C)2022 The New York Times

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