自傷行為を繰り返す13歳少女を「追い込んだ」もの アメリカで広がる10代のメンタルヘルス危機
7年生になった2019年秋、Mは人間関係でも苦しむようになる。親しい友達が人気者になると、Mは下校後、ベッドに潜り込むことが多くなった。「みそっかすになった気分だった」とM。「意識がなくなればいいのにと思った」。「部屋でただ座って泣いている」ときもあったという。
2020年の春、Mはさらに引きこもるようになった。オンライン授業になじめなかったMは、授業に出ているとウソをつき、罪悪感を覚えながらYouTubeを見た。むさぼるように見ていたのが、『ダンガンロンパ』というアニメシリーズだ。高校を舞台にした作品で、生徒たちは邪悪な学園長モノクマから、卒業する唯一の方法は仲間を殺すことだと教わる。
ある日の夕食後、ハサミで両足首を切った
Mはジェノサイダー翔というキャラクターに夢中になった。あるファンサイトには、ハサミを使って「イケメンばかりを惨殺する、機知に富んだ殺人鬼」というキャラクター紹介がある。
ある日の夕食後、Mは2階にいるときにハサミで両足首を切った。「宿題をやらない自分が腹立たしかった」とMは話した。「痛みが気持ちいい。ストレスを感じるよりいいかも、と思った」。自分の体を傷つけるという考えがどこから出てきたのかは思い出せないという。「何でもいいから自分を傷つけたかった」。
両親はMの太ももに切り傷のような跡があるのに気付いたが、そのことには触れなかった。長時間アニメばかり見ているのは心配だったが、「パンデミックだったから(仕方ないと思った)」とリンダは話した。
学校が夏休みに入ると、Mの精神状態は改善した。その夏、Mはダンガンロンパのスマホ版ゲームを見つけ、スマホに親が設定した制限設定を解除する方法も見つけ出した。Mは一日中ゲームをした。
「画面の中のジェノサイダー翔に夢中だった」という。「それから『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』をやるようになって、さらにハマった」。
「さみしかったんだと思う」。Mはジェノサイダー翔との未来を夢想した。「翔に殺されたいと思った。ほとんど殺されているんだけど死んでいなくて、残りの人生を翔と一緒に生きていく、っていう」。