日本の野菜がこんなにも「甘くなった」意外な事情 トマトもジャガイモも高糖度になっていないか
水分を減らすと、重量も減る。野菜の運送はバーチャルウォーターを運ぶ面があることから、「なるべく水分を減らして運びたい、傷みにくいものを運びたい、という発想も現流通現場ではあるのではないでしょうか。今は石油の価格がどんどん上がっているので、流通の問題もクローズアップされています」と中野特任教授は指摘する。
一方で、生産量と糖度は二律背反の関係にある。
「日本のトマトは10アール当たり10トンしか穫れませんが、オランダはその5~6倍穫れるんです。しかし糖度は4ぐらいで、日本人からすればまずい。このような性質は、栽培法だけでなく品質にも大きく依存しますが、トマトが光合成をする際、受けた光でできた炭水化物を甘くする方向に回すのか、生産量に回すかが違うわけです」(中野特任教授)。
中野特任教授によると、日本は農地が狭いことから、生産者が効率的に経営しようと甘いトマトを選んでいる面もある。野菜全体としては価格が落ちてきているが、トマトは比較的高くても売れる。
「昔に比べおいしくなっていることから、消費者は納得し、それなりにお金を払ってでもトマトを買うのだと思います」と中野特任教授。生産者がより高く売れるトマトを求めて、糖度を上げてきた側面があるのだ。
ニンジンが子どもの好きな野菜上位に
流通業者にとっても、糖度が高く水分が少ないトマトは都合がよい。「運ぶ際、崩れにくい。また、量販店の加工担当者は、例えばサンドイッチを作るにしても、色がよく形がしっかり見えて、味が悪くなったり、食べにくくなる要因となるドリップが少ない品種を求めます」と中野特任教授は指摘する。
つまり、消費者はもちろん、生産者にとっても、流通業者にとっても都合がよいことから、野菜の糖度は上がってきたのである。甘い野菜は、わかりやすくおいしい。果物のように甘い野菜は、テレビ番組の企画で食べたタレントも即座に反応できるし、生産者も魅力を説明しやすい側面はある。
「昔はニンジンが、子どもの嫌いな野菜ナンバー1でしたが、今や好きな野菜の上位に入ってきていると聞いたことがあります。やはり子どもが嫌いだったピーマンも、クセがない『ピー太郎』などが登場しています。最近は一般化しましたが、パプリカになると、糖度が10近くもあります。ニンジンとピーマンの変化の共通点は、クセのある味が取り除かれて甘さが増えたことです」と中野特任教授は解説する。
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