日本の野菜がこんなにも「甘くなった」意外な事情 トマトもジャガイモも高糖度になっていないか

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宮地社長は、「6センチ角のロックウールに納めた小さな根っこに、水と栄養の吸収を集中させることでストレスをかけ、糖度を上げます。株ごとに根っこが隔離されるので、1本が病気になってもそれだけ抜けば、ほかの株への影響は少なく済みます」と説明する。さらに、光センサー選果機で糖度や形、大きさなどを測ったうえで収穫するなど、ハイテクを駆使し品質を安定させている。

宮地社長が、糖度が高いトマトを開発したのは、市場やスーパーのバイヤーに、求められている野菜をヒアリングした結果だ。「5~7年前には、1年中安定的に高機能、高品質(高糖度)のトマトを出荷できるところがなかった」と宮地社長は言う。

長年、卸売市場で働いてきた宮地社長、生産者の高齢化が深刻になる中、誰でもできる農業のビジネスモデルを作る必要性を痛感し、2015年、ハッピークオリティを創業した。

市場を席巻したトマト「桃太郎」

野菜ソムリエ上級プロの資格を持つ中野明正・千葉大学園芸学部特任教授もトマトの糖度が上がっている要因は、品種と栽培方法が変わったことだと話す。

品種については、「1985年にタキイ種苗が桃太郎の育成を完成したことが転機」だという。「例えば、それまでよく作られていた強力米寿2号という品種は、糖度4.6程度だが、桃太郎は5.5あり、完熟させると5.8になる。別のカテゴリーですが、ミニトマトだと9、10程度もあります」。

桃太郎は登場するとすぐ市場を席巻し、1988年頃にはトマトの主要品種になった。「それまでのトマトより糖度が高く果実が固いので、完熟させてから流通できたことが普及の要因と言われています」(中野特任教授)。

一方、栽培方法は水をやる量を制御する、塩類を高濃度に含む養液を与えるなどの方法が一般的。こうした農法は、1980年代後半にメディアに取り上げられるようになったという。

「水を絞ると機能性成分の割合も一緒に上がる。トマトは2000年代の健康ブームで、抗酸化物質のリコピンなどの機能性成分が注目されました。おいしさと健康の両面から、高糖度化に拍車がかかったと推定されます」(中野特任教授)

ハッピークオリティのハピトマは、リコピンに加え、ストレスを和らげ血圧を下げると言われるギャバも豊富としている。

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