池上氏が解説「東西冷戦はどう始まり終結したか」 今の世界情勢も突き詰めるとここに行き当たる

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対立の理由は、一口で言えば、資本主義と社会主義の考え方の違いです。

資本主義は、国民に自由を保障して、何をしてもいいですよというのが基本です。結果的に競争社会になります。世の中に必要なものはみんなで競争して作るので経済が発展していく。

これに対して、社会主義は平等が一番大事です。格差があってはいけない。平等を追い求めるあまり、国民を自由にさせないで管理してしまうので、息苦しい社会が生まれます。

自由を目指してできた国がアメリカ。一方、平等を目指してできた国がソビエト社会主義共和国連邦、略してソ連。社会主義で発展しようとロシア共和国を中心に計15の国が集まってできた巨大な国(連邦制国家)です。

ソ連は大量の核兵器を保有し、いつでもアメリカと世界戦争ができるぞという強い力を持っていました。もし本当に戦争になったら、世界が滅びてしまうといわれるほどでした。

世界のツートップの大ゲンカでいつ核戦争になるかもしれない。そんな緊張感に満ちていたのが冷戦時代です。

アメリカとソ連の陣取り合戦

米ソは、考え方は天と地ほど違いますが、第二次大戦中はドイツや日本を倒すという共通の目的があったため、共に戦う仲間でした。しかし、もともと仲良しだったわけではないので、戦争が終わると対立が激化し、世界の陣取り合戦が始まりました。

当時、ソ連の指導者は独裁者スターリン。彼はなんとか自分の言うことを聞く国を増やそうとして、特に東ヨーロッパの国々に社会主義を押し付けました。

というのも、大戦中、ドイツがソ連に攻め込んできて、ソ連は莫大な犠牲者を出したからです。それがトラウマになったのです。ソ連にしてみれば、資本主義国との間に緩衝地帯を作っておけば、とりあえずソ連が直接攻められることはない。もし攻めてきても、戦場になるのは東ヨーロッパ諸国であって、ソ連ではない。

そういう考えで、スターリンは第二次大戦で占領した国々に自分の言うことを聞く政権を作り、強引に仲間にしていきました。

そして、そこに西側の悪い影響が及ばないように、いわゆる「鉄のカーテン」を引きました。つまり、鎖国のように国を閉ざしたのです。東側諸国の内部で何が起きているのか外からはうかがい知れないようにしました。

(同書より)
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