アフガンで「イスラム国がテロ」の意味すること タリバン、IS、アルカイダの複雑な関係
アフガニスタンの首都カブールで起きた自爆テロは、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」傘下の「ホラサン州(IS-K)が犯行声明を出した。イスラム主義組織タリバンが首都カブールを掌握して新政権の樹立を目指す中、アフガニスタンではIS−Kに加えて、国際テロ組織アルカイダも活動家数百人が潜伏しており、同国は「過激派の展示場」のような場所となっている。
「タリバン」「IS」「アルカイダ」はいずれもスンニ派の過激組織で、18世紀のアラビア半島で発祥した厳格なワッハーブ運動や原点回帰を目指すサラフ主義に強い影響を受けているという点で共通する。が、活動領域や闘争手段、最終目標に関しては大きな違いがある。
IS−Kのテロは、アメリカ軍を標的にするとともに、タリバンとアメリカの暫定的な協力関係に楔を打ち込み、タリバンを貶めようという狙いもありそうだ。これらの過激派3組織には、どのような違いがあるのだろうか。また、アフガニスタンは過激派が巣食う「テロの温床」になり、世界で再びテロの猛威が吹き荒れることになるのか。
タリバンはなぜアルカイダを匿うのか
3組織の源流はいずれも、東西冷戦下の1980年代にアメリカとソ連の代理戦争の舞台となっていたアフガニスタンで、侵攻していたソ連軍と戦っていたムジャヒディン(イスラム戦士)にたどることができる。ムジャヒディンは、地元のアフガニスタン人やアラブ人ら外国人勢力で構成され、1988年のソ連の撤退発表を受け、主に外国人の受け皿としてジハード(聖戦)を継続するためにアルカイダが結成された。
ウサマ・ビンラディン容疑者が率いたアルカイダは、旧南イエメンの共産主義政権打倒やソマリアに展開したアメリカ軍に対する抵抗活動の支援など各地の闘争に参加。湾岸戦争をきっかけにサウジアラビアにアメリカ軍が駐留したのを機に、対アメリカ闘争を先鋭化させた。
アメリカを弱体化させれば、それに支えられた親欧米のイスラム圏にある政権の打倒を容易にするという考えの下、世界各地で欧米やアメリカの同盟国であるイスラエルに関連した権益をテロの標的とする「グローバル・ジハード」を通じて、預言者ムハンマドの後継者や代理人が率いる伝統的な政治制度であるカリフ制国家の復興を目指している。
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