アフガンで「イスラム国がテロ」の意味すること タリバン、IS、アルカイダの複雑な関係

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女性の人権無視など恐怖支配を続けたタリバンは、ビンラディン容疑者を匿って政権の座から滑り落ちた過去の教訓から学び、女性の権利に配慮したり、アフガニスタンがテロの聖域となることを拒否したりするなど穏健路線を打ち出している。ただ、国際承認を焦るばかりに組織として統一的な行動を取る体制が整っていないにもかかわらず、指導部が主導する形で動いているとの見方が強い。

アフガニスタンの混乱した現状は、現場の戦闘員まで指令が行き届いていない実態を反映している。そもそも、指導部の理念を現場レベルの戦闘員が理解できているのかどうかは疑問との声も上がる。

アフガンが「失敗国家」となればテロの温床に

国際承認を狙った穏健路線に反発する勢力もいるはずで、タリバン指導部が進める路線は早晩、頓挫する可能性も大きいだろう。その場合、中国やロシアに頼るという道はあるとはいえ、欧米諸国はタリバンの承認には動かず、国際的に孤立して財政面で国家運営は行き詰まる。

アメリカは、タリバンの行動次第で国家承認に含みをもたせており、タリバンの特に指導部は、穏健な政権運営を行うよう努めている。だが、現場レベルの戦闘員の暴走やタリバン内の強硬派の反発から足並みが乱れて、穏健路線が頓挫して国際社会での孤立が鮮明となれば、タリバン指導部が描く円滑な国家運営のビジョンは崩れる。

その場合、内向きとなってアルカイダなどテロ組織との関係を交渉のカードに使わざるを得ない状況に追い込まれる。そうなれば、アフガニスタンがテロの温床として世界の不安定化要因となってしまう。

タリバンと対立するIS-Kは、タリバンの穏健路線が順調に進み、政権基盤が強固になれば、活動の自由が狭まるとの読みから、アフガニスタンの不安定化を虎視眈々と狙っている。アメリカ軍を標的にしたテロも、タリバンとアメリカの関係に亀裂を生じさせ、アメリカ軍撤退を遅らせて混乱させようとの思惑があるだろう。

タリバンが政権運営に失敗すれば、「失敗国家」となって統治の及ばない地域にテロ組織が巣食う。タリバン自身も厳格な宗教規範の徹底など形だけ体裁を整える恐怖の統治に逆戻りする恐れもあるだろう。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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