アフガンで「イスラム国がテロ」の意味すること タリバン、IS、アルカイダの複雑な関係

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加えて、現場レベルの戦闘員にまで十分に意思統率されていないこともあり、自爆テロには、タリバン戦闘員の協力があった可能性も否定できない。国際承認を焦って穏健路線を打ち出したタリバン指導部の方針に基づいて、末端の戦闘員が統一して動いているかどうかは疑わしいというのが実情だろう。

ISは、2003年のイラク戦争を機に創設されたアルカイダ系組織を母体とし、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)という名称を経て、2014年6月、シリア内戦やイラク戦争の混乱で中央政府の支配が揺らいだ両国の一部地域を領土とするカリフ制国家「イスラム国」の樹立を宣言。レバントとはイラクやシリアなど地中海東部地方の歴史的な呼称だが、世界進出を狙ってイスラム国という普遍的な名称に改変した。

ISには、旧フセイン政権の関係者やイラク軍関係者も加わり、一時は実際に領土を支配して複数の油田などの資金源も確保した。アルカイダに比べて軍事部門や政府部門など組織化された動きを取ったのが特徴だ。斬首や極端なシーア派敵視など残虐行為が目立ち、アルカイダの指導者であるザワヒリ容疑者は2014年、ISILをアルカイダから破門しており、以後、アルカイダ系組織とISは対立関係にある。

今回テロを行った「ISホラサン州」のホラサンとは、イランやアフガニスタン、トルクメニスタンの一部を含む歴史的な呼称で、IS-Kは2015年1月に結成された。国連報告書によると、戦闘員の数は、1500~2200人程度。アメリカ軍の掃討作戦で追い詰められており、主要な拠点は、アフガニスタン東部のナンガルハル州やクナール州の山間部など限られた地域だが、首都カブールでもテロを起こすなど限定的なテロ遂行能力があるとされる。

ISは、タリバンとアメリカ政府の和平交渉を引き合いに、「十字軍(欧米諸国)と合意を結んだ背教者」とタリバンを侮蔑する。タリバンは2001年までの政権時代、自らを「アフガニスタン・イスラム首長国」と呼称していた。

タリバンとIS-Kは、アフガン国内で衝突を繰り返しており、現地を取材するジャーナリストは、「タリバンはイラン型のイスラム法を重視した宗教国家の樹立を目指しているとの見方が強く、勝手にアフガニスタンをカリフ制国家の一部だと主張するISを敵視しているのではないか」と解説する。

アメリカ軍を標的としたテロが起きるなど混沌とした様相を呈しているアフガニスタン。アメリカ同時テロなどアフガニスタンを拠点にテロ組織が活発化し、再び世界の平和を脅かすようになるのだろうか。

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