成長戦略のカギとなる要素市場改革
米中対立の先鋭化以来、先行きに不透明感がぬぐえない中国経済は、今後どのような戦略の下で、持続的な成長を目指していくのだろうか。筆者は、(生産)要素市場改革がその趨勢を見るうえで重要なカギを握るのではないかとみている。
中国共産党はすでに2020年3月の段階で、「生産要素市場のより完全な配置体制とメカニズムの構築に関する意見」という文書を発表している。同意見書は、土地・労働・資本に技術・データを加えた5大生産要素について、
①市場メカニズムに従い、効率性の高い配置を実現する
②生産要素のスムーズな移動を阻害する制度的要因を撤廃し、要素市場の構築と発展を促進する
という方向性を強調した。
これを引き継ぐ形で、今年の1月に国務院は「要素市場化総合改革試点総体法案」を発表し、5大生産要素の市場化に向けた具体的なプランを明らかにした。その注目すべき内容としては、市場を通じた土地資源の効率的な利用、労働者の技術・技能を評価できるシステムを通じた労働市場の流動化、新技術の知的財産権保護やデータの流通に関するルール・制度の整備、などがある。
同文書は2025年までに、これらの一連の改革において「画期的な成果」を収めることを目的に掲げている。これらの取り組みに関しては、2022年3月に行われた全国人民代表大会でも詳しい報告が行われた。
これまでの制度改革との連続性
このような要素市場改革は、1980年代より進められてきた中国の市場化改革のいわば「最終段階」に位置づけられる。要素市場改革はこれまで実行が困難だった制度改革とも深く絡んでおり、また生産要素の移動によって特定地域の経済がダメージを受けかねないことから、これまで「後回しにされていた」という側面があるからだ。
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