大久保利通が倒幕後「大阪遷都」熱弁した納得理由 明治天皇に初めて拝謁したときには涙を流した

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大久保ほど新政府で存在感があっても、天皇に拝謁することは本来かなわぬことだった。この拝謁も行幸の場だからこそなしえたこと。京の朝廷では実現が難しかったに違いない。これだけでも大阪行幸の意義は大きかったと言えるだろう。

それは何も大久保にとってよかったということではない。天皇が京都から離れて、遠い大阪まで来たこと自体が、朝廷改革の大きな一歩だ。これから新しい時代が始まると、人々に大きなインパクトを与えることに、大久保は成功したのである。

「江戸城無血開城」は西郷のスタンドプレー?

ちょうどそのころ、江戸城では、徳川慶喜の処遇をめぐり、西郷隆盛が勝海舟と対峙していた。当初は「慶喜は切腹すべし」と強硬に主張した西郷だったが、勝との会談をへて態度を一変。慶喜助命へと傾き、江戸城の総攻撃は中止される。

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戊辰戦争で犠牲者を出しながらも、明治維新が「無血革命」として他国からも高く評価されるのは、この江戸城無血開城のイメージが大きい。

そんな歴史的瞬間にもかかわらず、大久保は西郷と勝の会合について、日記には事実を淡々と書くのみで、特別な思いは綴られていない。もともと言葉が少ないのが、大久保の日記の特徴とはいえ、局面で繰り返される西郷の変節に、思うところがあったのかもしれない。その後、西郷の徳川家に対する処分の甘さが、新政府の首脳部で問題視されることとなる。

だが、内部でゴタゴタしている場合ではない。新しい時代の幕開けにあたり、やるべきことは山ほどある。とりわけ難題なのが、全国の藩が所有する土地を朝廷に返上させる「版籍奉還」をいかにして行うかだ。そして「廃藩置県」による中央集権化こそが、明治維新の根幹だといってよい。

大変革が必要なときにこそ、敵に回すと手ごわいが、味方にすると頼もしいのが西郷である。大久保はまだ西郷と対立するわけにはいかなかった。

(第27回につづく)

【参考文献】
大久保利通著『大久保利通文書』(マツノ書店)
勝田孫彌『大久保利通伝』(マツノ書店)
松本彦三郎『郷中教育の研究』(尚古集成館)
西郷隆盛『大西郷全集』(大西郷全集刊行会)
日本史籍協会編『島津久光公実紀』(東京大学出版会)
徳川慶喜『昔夢会筆記―徳川慶喜公回想談』(東洋文庫)
渋沢栄一『徳川慶喜公伝全4巻』(東洋文庫)
勝海舟、江藤淳編、松浦玲編『氷川清話』 (講談社学術文庫)
佐々木克監修『大久保利通』(講談社学術文庫)
佐々木克『大久保利通―明治維新と志の政治家(日本史リブレット)』(山川出版社)
毛利敏彦『大久保利通―維新前夜の群像』(中央公論新社)
河合敦『大久保利通 西郷どんを屠った男』(徳間書店)
家近良樹『西郷隆盛 人を相手にせず、天を相手にせよ』 (ミネルヴァ書房)
渋沢栄一、守屋淳『現代語訳論語と算盤』(ちくま新書)
鹿児島県歴史資料センター黎明館 編『鹿児島県史料 玉里島津家史料』(鹿児島県)
安藤優一郎『島津久光の明治維新 西郷隆盛の“敵”であり続けた男の真実』(イースト・プレス)
萩原延壽『薩英戦争 遠い崖2 アーネスト・サトウ日記抄』 (朝日文庫)
家近良樹『徳川慶喜』(吉川弘文館)
家近良樹『幕末維新の個性①徳川慶喜』(吉川弘文館)
松浦玲『徳川慶喜―将軍家の明治維新増補版』(中公新書)
平尾道雄『坂本龍馬 海援隊始末記』 (中公文庫)

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