食べて→吐く「過食症」コロナで増える異変の実際 コンビニで「1回2000円買う人」は要注意

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Aさんも昼間から食べ吐きをするようになったが、その影響で仕事や生活にも支障が出てきた。〝これは何とかしないと〟と思ったのが受診するきっかけとなったという。

ストレスが溜まると〝過食→嘔吐〟に走る人たち。彼ら彼女らには何が起こっているのだろうか。この行動に大きな影響を与えているのが、「脳の働き」と「社会環境」だと立川さんは言う。

「まず脳の働きですが、誰でも食べものでお腹いっぱいになると幸せを感じますよね。それは、食事をすることで大脳からドーパミンという神経伝達物質が分泌されるからです。ドーパミンは〝快〟の感情をもたらすので、もっと食べて快を得たいという気持ちが湧き起こるのです」

ドーパミンが分泌されると楽しい気分になるが、その一方で、脳はその行動(ここでは食べ吐き)と快の刺激を結び付けて、同じ行動を求めるようになる。要するに依存状態になるというわけだ。

さらに、糖質をとったときにもドーパミンが分泌されるため、これが過食のきっかけや、過食をやめられない原因になっているという考え方も出ている。

慢性化すると「食」のことが常に頭から離れなくなり、その結果、単にカタルシスを得るだけの行為が依存に発展してしまう。「そういう意味で言えば、過食症は〝脳レベルの病気〟ともいえます」と立川さんは言う。

もう1つの社会環境に関しては、「〝理想のボディイメージ〟に囚われすぎる人は、やはり〝過食→嘔吐〟につながりやすい」(立川さん)そうだ。過食症の9割が女性というのは、まさに女性のほうが男性より理想のボディイメージにこだわる傾向が強いからといえる。

「私たち専門家からみると、とくに過食症になる女性は〝痩せているほうが美しい〟という価値観のプレッシャーを強く受けているように思えます。最近は、痩せていても太っていても関係ない、ありのままの自分でいいという〝ボディ・ポジティブ・ムーブメント〟が注目されていますが、それでもまだ〝痩せ願望〟は根強い。ちなみに、こうした女性たちが意識するのは異性ではなく、同性です。同性との競争が痩せ願望を加速させます」(立川さん)

過食症患者の特徴の1つに、〝病識(自分が病気であることを理解していること)〟があることが挙げられる。でもやめられないでいるのだ。また、病院に行くほどではない(と本人が思っている)から受診していない、水面下にいる〝隠れ過食症患者〟はかなり多いのでは、立川さんはみている。

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