5月大統領選のフィリピンに日米中が近づく理由 「第2次ドゥテルテ政権」見据えて先手争い

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2022年4月9日、日・フィリピン外相会談を前に、笑顔で「肘タッチ」する林芳正外相(右)とフィリピンのロクシン外相(写真・時事)

米中対立が激しさを増すなか、最前線の南シナ海を抱え、地政学的な重要性が高まるフィリピンをめぐり、日米と中国のつばぜり合いが激しさを増している。

アメリカ軍はフィリピン軍と史上最大の共同演習を2022年4月8日まで実施した。両国の同盟関係を補完する形で日本は翌4月9日、フィリピンと初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を催した。一方の中国は習近平国家主席がフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と4月8日にオンラインで会談し、日米への接近にくぎを刺した。いずれも5月9日投票のフィリピン大統領選とポスト・ドゥテルテを見据えた動きである。

史上最大規模の合同軍事演習

2022年3月28日に始まった米比合同軍事演習「バリカタン」には、オーストラリア軍も含めて史上最多の約9000人が参加した。ルソン島北部からパラワン島にかけて、海上警備や水陸両用作戦、テロ対策、災害対応などをテーマに50機を超す航空機、10隻の水陸両用船、ロケット砲、パトリオットミサイルなどが投入された。

演習終了を受けて在フィリピン・アメリカ大使館のヘザー・ヴァリア臨時代理大使は「パンデミックの2年後に最大規模の演習を実施できたことは同盟の強さの証である」と両国のきずなを強調した。あえてパンデミックから2年と言及したのは、毎年恒例のバリカタンが2021年にはコロナ禍のため大幅に規模を縮小し、2020年はそもそも実施されなかったからだ。表向きはコロナの広がりを中止の理由としていたが、ドゥテルテ大統領が2020年2月、演習の前提となる訪問アメリカ軍地位協定(VFA)の破棄をアメリカ側へ通告したことが引き金になったとみられている。

1998年に結ばれたVFAは、1951年のフィリピン・アメリカ相互防衛条約(MDT)、ベニグノ・アキノ前政権下の2014年に締結した防衛協力強化協定(EDCA)と並んで両国の同盟関係を支えてきた。ところがアメリカ政府が2020年1月、ドゥテルテ氏肝いりの麻薬撲滅政策(麻薬戦争)で陣頭指揮を執ってきた元国家警察長官へのビザ発給を拒否したことに激怒したドゥテルテ氏が破棄を指示したのだ。

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