ミャンマーのクーデターで機能不全に陥るASEAN カンボジアとシンガポールが今後のカギを握るが……
ミャンマー国軍によるクーデターから2022年2月1日で1年になる。総選挙で示された民意を踏みにじり、抵抗する市民ら約1500人を殺害、多くの国民を苛酷に弾圧することで権力を維持してきた。武力による政権転覆とその後の暴力的支配に対し、欧米を中心に激しい批判が寄せられた。一部の国は経済制裁に踏み切り、日本も援助案件の新規供与は見送った。
しかし事態が改善されることはなく、国連安保理は機能不全、日本政府の「独自のパイプ」も詰まったままだ。状況が膠着するにつれ、国際社会の主たる関心は、緊迫するウクライナ情勢や台湾海峡問題、北朝鮮の挑発的な行動に移り、ミャンマーについては「東南アジア諸国連合(ASEAN)の調停を見守る」構えの国が増えている。
そのASEANでは、ミャンマー問題をめぐり2022年1月に予定されていた定例の外相会議がキャンセルされるなど混迷が深まっている。加盟国に対し適切に対応できない現状は、地域機構としての限界を露呈させるだけでなく、さらなる求心力の低下も予想される事態を招いている。
議長国交代直後の電撃訪問
欧州連合(EU)のような大規模な官僚組織や事務局を持たないASEANでは、持ち回りで毎年交代する議長国の役割は大きい。その年の議論を引っ張り、ロジを担う。
2021年のブルネイに替わって、22年はアルファベット順でカンボジアがその座についた。するとフン・セン首相は1月7日に早速、ミャンマーの首都ネピドーを訪問し、クーデターを首謀したミンアウンフライン国軍総司令官と面談した。外国首脳の訪問は政変後初めてだった。
会談後、カンボジア外務省は、総司令官が少数民族武装勢力に対する停戦を22年末まで延長することや、ASEANとミャンマー国軍が合意した5項目に沿って、特使を受け入れ、すべての関係者と面会できるよう計らうことなどを表明したとする共同プレスリリースを出した。
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