ミャンマーのクーデターで機能不全に陥るASEAN カンボジアとシンガポールが今後のカギを握るが……

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フィリピンのロクシン外相は2022年1月16日、ツイッターを連投した。フン・セン首相のミャンマー訪問を歓迎するとしながらも「国軍のいう停戦の協議にはすべての当事者が参加する必要がある。アウンサンスーチー氏もそこにいなければならない」「民主主義の復活にはアウンサンスーチー氏の存在が不可欠だ」などなど。

マレーシアのサイフディン外相は2022年1月13日、「フン・セン首相の訪問は、国軍を認知したと受け取られるおそれがある。議長国として行くなら他の首脳と相談すべきだった」と報道陣に話し、「訪問は成果を上げたか」という問いに「No」とひとこと。不快感をあらわにした。

この発言に対してフン・セン首相は自身のフェイスブックで2022年1月21日、「外交上非礼で傲慢だ。ASEANの議長への敬意に欠ける。そのようにマレーシアの外相に伝えるようにインドネシアのジョコ大統領に話した」と憤懣(ふんまん)をぶつけた(直接言えばよさそうなものだが)。

前代未聞の非難合戦

全会一致と内政不干渉を設立以来の指針としてきたASEANでも加盟国間の争いはこれまでにもあった。しかしながら首脳間のやりとりや他の首脳の行動について、各国がそれぞれメディアに向けて批判的に発言し、怒りさえぶつけるという事態は極めて異例である。それぞれの国が域外の国々や人権団体などの視線を意識した結果だと想像できる。ミャンマー国軍に対する姿勢を明らかにする必要を各国が感じているのだ。

2021年11月にオンラインで開催された中国・ASEAN首脳会議では、ホストの中国政府がミンアウンフライン氏を招待しようとしたが主要国が反対し、反発した国軍はここでも出席そのものを取りやめた。2022年1月の外相会談にミャンマー国軍の「外相」出席させようとしたカンボジアの動きは、中国と平仄を合わせた形だ。

カンボジアは前回議長だった2012年、南シナ海問題で中国の主張を代弁する形で外相会議の議長声明をまとめようとして、中国と領有権を争うフィリピンやベトナムと対立した結果、声明を出せない前代未聞の事態に陥った。その後も中国に批判的な声明などにはことごとく反対してきたこともあり、国軍に抵抗するミャンマーの民主派はフン・セン氏を「中国の傀儡」と呼んで、今回の訪問を批判していた。

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