ミャンマーのクーデターで機能不全に陥るASEAN カンボジアとシンガポールが今後のカギを握るが……

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5項目の合意は、ミンアウンフライン氏が出席してジャカルタで開かれた2021年4月のASEAN臨時首脳会議で決まった。①暴力の即時停止、②全関係者の建設的な対話、③ASEAN特使による仲介、④人道支援の提供、⑤すべての関係者と面会するためのASEAN特使のミャンマー訪問だが、2021年中はどれも実現しなかった。国軍がデモ隊への発砲をやめないだけではなく、クーデターまで同国の政権トップだったアウンサンスーチー国家顧問ら、2020年11月の総選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)幹部らと特使の面会を拒んだためだ。

フン・センの独断と、牽制する各国

国軍の「約束破り」に反発したASEANの主要国は2021年10月にオンラインで催された定例首脳会議にミンアウンフライン氏の参加を認めなかった。これに反発した国軍もASEANが求めた「非政治的な代表」を出席させなかった。首脳会議に加盟国の代表が参加しないのは初めてのことだった。

今回のカンボジア政府のプレスリリースでは、国軍が譲歩したようにも読めるが、「ミャンマーの現状を考慮したうえで」との但し書きがあり、アウンサンスーチー氏らと特使の面会が実現するかは不明だ。少数民族武装勢力との停戦には触れていても、抵抗運動を続ける民主派勢力について言及はなく、実際にその後も殺戮は続いている。

フン・セン首相のミャンマー訪問を受けて、2022年1月18、19両日にカンボジアのシエムレアプで開かれる予定だったASEANの定例外相会議がキャンセルされた。新議長国がその年の方針を示し、取り組むべき課題について議論する年初の重要な会議である。

カンボジア政府がミャンマー国軍の任命した「外相」を外相会議に出席させる意向を示し、これにインドネシア、マレーシア、シンガポールといった主要国が反対して会議そのものが流れたとみられる。

シンガポール外務省は2022年1月15日、リー・シェンロン首相が前日にフン・セン首相とオンラインで会談し、5項目の合意に進展が見られない段階では、ミャンマーからは「非政治的な代表」を参加させるべきだと伝えたことを明らかにした。発表文には、フン・セン首相の訪問後も国軍が反対派への暴力を止めていないこと、アウンサンスーチー氏に新たな有罪判決が出されたことをリー首相がフン・セン首相に指摘したとわざわざ書かれている。

続いてインドネシアのジョコ・ウィドド大統領も2022年1月21日にフン・セン首相とオンラインで会談し、リー首相と同様、5項目合意に進展がない現在、国軍の代表を受け入れるわけにいかないとの立場を明らかにしたと同国外務省が発表した。ジョコ大統領はフン・セン首相の出発前にも同趣旨の申し入れをしていた。

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