5月大統領選のフィリピンに日米中が近づく理由 「第2次ドゥテルテ政権」見据えて先手争い

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他方、首脳同士の宥和的なやりとりとは裏腹に、中国との間では南シナ海をめぐりいざこざが続いた。

2021年11月、フィリピンが実効支配するアユギン礁に近づこうとした補給船を中国海警局の艦艇3隻が妨害して追い返す事案が発生し、ロクシン外相が在フィリピン中国大使を呼んで抗議した。2022年3月には、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるスカボロー礁周辺で中国海警局の艦艇がフィリピン沿岸警備隊の巡視船に威嚇行動を繰り返し、外務省が再び中国政府に抗議した。

ドゥテルテ大統領は2022年3月10日、ロシアによるウクライナ侵略に関する影響がアジアに及んだ場合には「軍事施設をアメリカに提供する用意がある」と発言した。

中国側から申し入れられた首脳会談

合同軍事演習の拡大も含めて看過できないと考えたのか、中国側から首脳会談の申し入れがあった。1時間の会談で両首脳は「相互協力のための同意可能なフレームワークを策定する」と決め、南シナ海問題については、東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で法的枠組みである行動規範(COC)の策定作業を加速させることで合意した。さらに中国側からはフィリピン製品の輸入促進、インフラ整備事業への支援などが提案されたという。

日本政府はこの間、フィリピンとアメリカをつなぐ役割を果たそうとしてきた。アメリカ政府高官ともあまり口をきかないドゥテルテ氏だが、市長時代に訪日して心づくしの接待を受けたころもあり、親日姿勢は一貫していた。安倍晋三首相(当時)をダバオの自宅でもてなしたこともあった。南シナ海をめぐる日米とフィリピンの共闘は叶わなかったが、フィリピンが中国に一方的に傾斜しないよう、日本政府は鉄道網整備などを中心に多額の援助行ってきた。

バリカタンの終了式典、習・ドゥテルテ会談が行われた翌日の2022年4月9日に東京都内で催された日本とフィリピン初の2プラス2 では、自衛隊とフィリピン軍の協力拡大を柱とする共同声明が発表された。共同訓練に関する「円滑化協定」や物資、役務を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結も検討するという。

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